2017年1月9日(月)
きょうの潮流
どこにカメラを向けるか。世界が直面する「難民問題」に正面から向き合った二つのドキュメンタリーに出合いました▼一つは、2016年度ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した映画「海は燃えている〜イタリア最南端の小さな島」(2月公開)。ジャンフランコ・ロージ監督がカメラを向けたのは、この20年で約40万の難民移民が押し寄せるランペドゥーサ島です▼映し出されるのは、島民たちのありふれた日常。しかし島には瀕死(ひんし)状態の難民がひっきりなしにたどり着く、もう一つの「日常」があります。「こうした人々を救うのは、すべての人間の務めだ」と語る、島でただ一人の医師。小さな島を通して、現在の切迫した問題をあぶりだします▼もう一つは、シリア難民の家族に5年間、密着したNHKの番組「シリアを遠く離れて〜アンマール少年と家族の5年」。内戦で故郷を追われ、家族が引き裂かれた15歳の少年の目を通して戦争を描きます。気づかされるのは、「難民」という言葉でくくられる人々が、自分たちと変わらない人間であること、平和でさえあれば彼らにも平凡な日常があったであろうこと…▼同時に、外国勢力の介入がいかに内戦の泥沼化に拍車をかけているかということも浮き彫りに。真の「国際貢献」とは何か、憲法9条を持つ日本は何をすべきかを突き付けます▼15年、日本では7586人が難民認定を申請しましたが、認定されたのは、わずか27人。これが安倍首相のいう「世界の真ん中で輝く」日本の姿です。