2017年1月7日(土)
点検 12年の空白
中日本高速 笹子トンネル 天井板上部
見逃し、撤去先延ばし
中央自動車道の笹子トンネル(山梨県)でトラックと天井板が接触したことは、崩落の危険につながる重大トラブルだったのではないか―。同トンネルを管理する中日本高速道路は、なぜ見逃してしまったのでしょうか。
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笹子トンネルの天井板は、トンネル天頂部に接着剤で固定したアンカーボルトでつり下げる方式です。
事故後、国土交通省の調査・検討委員会では、接着ボルトの引き抜き試験を行っています。結果は「衝撃荷重や機械的振動のようなものを加えない限り」という条件付きで強度に「問題はない」と結論づけていました。
つまり、トラックが接触するといった衝撃荷重は、ボルトの強度に影響する想定外の事態だったのです。
ところが中日本は、接触事故がわかった後、天井板の損傷した部分をたたき落としただけ。しかも12年にわたって天井板上部を点検していなかったのです。(表)
笹子トンネルでは、旧道路公団時代の2000年に足場を使った近接目視や打音検査が行われました。
05年、08年の定期的な点検では、路面からみただけ。天井板上部を点検しませんでした。
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天井板崩落事故直前の12年9月の点検では、天井板上部の点検はしました。
しかし足場を組まない点検だったため、作業員の手が届く天頂の低い区間でしか打音点検をしませんでした。
接触事故が起きた区間は、天井板から天頂部までの高さが5・3メートルもある地点です。
そのため、この地点では打音点検が行われず、離れた場所から双眼鏡と懐中電灯を使った“近接”目視しか行われませんでした。
しかも中日本は、09年に笹子トンネルの天井板撤去を計画していましたが、これを先延ばし。崩落事故が起きるまで撤去することはありませんでした。一方で西日本高速道路は、民営化後に管内15トンネルの天井板を撤去しています。
「笹子トンネルの真相を探る会」のメンバーで大阪経済大学の西山豊教授は指摘します。
「接触の影響について、中日本が慎重に検討した形跡がない。いったん崩落が起きると重大な被害を引き起こす天井板の連結構造や点検しにくい構造につくった設計ミスに加え、点検ミスと撤去を先延ばしした経営ミスが重なった」