2017年1月7日(土)
主張
空中給油訓練再開
沖縄県民の命より米軍優先だ
昨年12月の沖縄県名護市沿岸への墜落事故を受けて停止していた米海兵隊機オスプレイの空中給油訓練の再開が強行されました。米軍の再開要求に、政府が「日米同盟の抑止力」のために「空中給油は極めて重要」と「理解」(稲田朋美防衛相)を示したからです。オスプレイが空中給油訓練中に起こした事故の原因は「米側の当局により調査が行われている最中」(同)です。事故原因の特定もできていないのに訓練再開を容認したことは沖縄県民や国民の安全より「日米同盟」を最優先する言語道断の態度であり、主権国家の政府としての資格が問われます。
県民への約束次々ほご
今回の墜落事故をめぐり、政府は、事故原因の究明や安全性の確認という、沖縄県民や国民への約束を次々とほごにしてきました。
墜落事故は昨年12月13日、米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)のオスプレイが、米軍嘉手納基地(同県嘉手納町など)の特殊作戦機MC130から空中給油を受ける訓練中に起きました。稲田防衛相は事件直後、原因究明やオスプレイの「安全が確認されるまでの飛行停止」を米軍に申し入れました。
しかし、米軍は事故からわずか6日後の19日、「(原因の)詳細についての調査は継続中」なのに、もっぱらオスプレイのプロペラが給油ホースに接触したためと考えられるなどとし、空中給油以外の飛行再開に踏み切りました。政府も「オスプレイの機体自体の安全は確認された」という米軍の一方的な説明をうのみにし、一転、「空中給油以外の飛行再開は理解できる」(稲田氏)と表明しました。
沖縄をはじめ全国で「事故の徹底解明とそれに基づく安全性の確認がほごにされた」という怒りが広がったのは当然です。
今回の空中給油訓練の再開も「給油ホースがオスプレイのプロペラに接触した原因を完全に特定するには至っていない」(同)にもかかわらず、事故から3週間あまりの短期間で決定されました。
政府は、オスプレイや空中給油機の搭乗員に対し空中給油に関する教育・研修を実施したという米軍の説明を受けて訓練再開をまたもや容認しました。「訓練再開を検証するにあたり米側の意見を一方的に追認する」(翁長雄志沖縄県知事)態度にほかなりません。
政府は、米軍の特権を保障する日米地位協定の壁に阻まれて原因究明の「蚊帳の外」に置かれ、独自の情報を全く持っていません。それなのに、米軍の説明を「理解」してきたのは無責任の極みです。
日米地位協定は、「公務中」の事故について第1次裁判権が米側にあると規定しています。同協定に基づき、日本側は米軍の財産の捜索、差し押さえ、検証を行う権利を放棄しており、捜査をするには米側の同意が必要です(日米合意議事録)。このため日本の捜査機関(海上保安庁)は捜査協力を米軍に申し入れていますが、いまだ回答さえありません。
対米追随の政府許さず
沖縄に駐留する米第3海兵遠征軍のニコルソン司令官が“県民に被害がなかったから感謝すべきだ”と発言したように、米軍は全く無反省です。占領者意識丸出しの米軍と、それに追従する日本政府の姿勢を許さず、オスプレイの飛行中止、配備撤回を求める声を広げることが重要です。