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2017年1月4日(水)

ASEAN結成50年 話し合い精神で紛争解決

議長国フィリピン ヤサイ外相に聞く

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 東南アジア諸国連合(ASEAN)は今年、1967年の結成から50年がたちました。紛争や諸国間対立の激化を防ぎ、平和と安定に貢献する共同体として発展し、現在では東南アジア10カ国すべてが加盟しています。今年のASEAN議長国を務めるフィリピンのペルフェクト・ヤサイ外相に抱負と展望を聞きました。(マニラ=松本眞志)


写真

(写真)フィリピンのヤサイ外相(松本眞志撮影)

 ―議長国として今年の活動の抱負と構想を聞かせてください。

 フィリピンはASEAN創立メンバー国です。世界で最も成功した地域共同体であるASEANの積み上げた成果を踏まえ、継続し、さらに実績を築きたいと思います。特にASEANの「中心性」と「結束」を重視していくつもりです。

 私たちは諸問題や加盟国の地位に影響を及ぼす紛争への対応として、「ASEAN方式」を採用しています。話し合いの精神で問題にとりくみ、平和と安定のための行動や努力を保証する方式です。

 ASEANは昨年創設した共同体の三つの柱「政治・安全保障」「経済」「社会・文化」の目標と優先課題の実現を目指しています。

 「政治・安全保障」では、紛争解決の基本原則に強く執着していきたいと思います。

 南シナ海域を通過する国際貿易は世界全体の65%を占めており、この海域の航行と飛行の自由が保障されることを明確にし、域外国も含めた相互利益の保証が必要です。

 南シナ海をめぐる中国との紛争は、特別に懸念している問題です。この間、常設仲裁裁判所が好ましい判決を下しましたが、強制執行できないので問題は未解決の状態です。

 ―50年前、戦乱の地だった東南アジアはいま、平和で安定した地域になりました。あらためて、ASEANの果たした役割をどのように評価されますか?

 ASEANには加盟国の内政に干渉しないとする基本原則があります。一方、各加盟国のなかには国内に問題を抱え、問題への効果的対処に苦慮している国もあります。問題解決を望む加盟国は、援助を歓迎するでしょうが、ASEAN加盟国の支援が不当な干渉行為になってはならないと思います。

 私たちは全会一致の原則で行動し、特定の国が懸念する国内問題への不当な干渉は避けたいと思います。他国に対する「支援」は、平和と安定を維持する方法、ASEANの「結束」と「中心性」を追求する方法に依拠することが必要だと考えます。

軍事同盟 将来は解体

図

 ―常設仲裁裁判所の判決が下されましたが、中国との今後の関係をどう進めるのでしょうか?

 判決は、紛争海域がフィリピンの排他的経済水域の一部であるという判断を示しましたが、常設裁判所には強制的執行権はなく、中国は判決を否定する姿勢を鮮明にしています。中国は私たちに2国間交渉を求めていますが、私たちは判決を枠組みとすることを条件にしています。中国が判決を無視するなら、私たちも2国間交渉に応じるつもりはありません。

 一方、緊張を高める代わりに、南シナ海の紛争が中比関係全体を規定しないとしたことによって、紛争解決を急がずにこれを棚上げにし、両国間の貿易や投資、インフラ(経済・社会基盤)、安全保障問題での協力、人的文化的交流を推進して両国の利益を図るつもりです。

 両国の利益を重視することは、信頼を醸成し、世界の平和と安定の実現に貢献するものです。フィリピンの権利について中国と妥協するのではなく、他の側面を生かして信頼を構築する考えです。私たちは将来、紛争の解決の軌道に立ち戻ることができると考えています。

米国依存やめ独立の外交へ

 ―トランプ次期米政権が発足します。米国とどのような関係を築くのでしょうか?

 ドゥテルテ政権の下で私たちは、独立した外交方針を改めて重視しています。フィリピン憲法は独立した外交を定めていますが、過去の外交政策は米国との特別な関係のため、一方的で偏っていました。

 しかし、私たちの歴史では偏った外交が正当化されました。冷戦時代の東南アジアでは、ソ連と中国による侵略的で拡張主義的な浸透という「ドミノ理論」が支配し、米国との同盟関係を急ぐ空気がありました。フィリピンは米国と軍事同盟を結びますが、ソ連崩壊後、「ドミノ理論」は誤りであることが明らかになりました。

 フィリピンは米国との同盟関係によって自分の足で立つ能力がないところまできてしまった。ドゥテルテ政権はこれを反省し、同盟関係の再構築、バランスのとれた独立した外交方針を目指します。

 私たちは、米国への依存という過ちを正そうとしています。トランプ氏とドゥテルテ氏の性格は両国関係に役立つかもしれない。しかし、両国の指導者間の関係のみに依拠したのでは何も解決できません。重要なのは両国の政策の核心部分を重視し、より緊密な関係を促進する組織構造に注目することです。

 ―日本には何を期待していますか?

 日本からは、ミンダナオ島南部地域での海賊行為やテロ活動や国境地域での安全確保に必要な高速艇などの艦船が贈られました。特にミンダナオ島の発展とイスラム過激派との和平にとって日本からの支援は重要です。

 日本との友好関係は大歓迎ですが、それが軍事同盟になることはありません。軍事同盟は現在、平和構築には何の役にも立たず、将来、解体する必要があります。軍事同盟はそもそも戦争に備え、敵に備えるもので、真の国益を求める私たちの立場とは異なります。

北東アジア平和構築を歓迎

 ―北東アジア地域で東南アジア友好協力条約(TAC)のような条約を結んだり、ASEANのような共同体を設立する構想についてどう思いますか?

 フィリピンやASEANにとっても非常に重要なことです。世界のどこでも平和と安定は保証されなければならないし、私たちは常に、繁栄を確保する目的で平和と安定を希求しています。もちろん日中間のように、紛争を抱える国の2国間協議が必要な場合もあるし、それを地域共同体が肩代わりできないこともあります。

 私たちはすでに、日本、中国、韓国など域外国も含めたASEANプラス1のようなメカニズムをもっていますが、北東アジア地域で紛争を抱える国同士が、問題解決のメカニズムを構築することは大いに歓迎すべき方向だと思います。


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