2016年12月29日(木)
トランプ氏核増強発言に批判
「十分にぞっとさせる」“軍拡ではなく対話を”
米主要紙・識者ら
米主要メディアや識者、反核運動団体などはトランプ次期大統領が22日に核増強発言をしたことに対して批判し、その危険性を指摘しています。この発言はトランプ氏がツイッターを通じて「核兵器に関して世界が分別を取り戻すまで、米国は核戦力を強化、拡大しなければならない」と述べたものです。
(ワシントン=洞口昇幸)
米紙ワシントン・ポスト(電子版)の26日付は、同発言について「十分にぞっとさせる」とした上で、最も気がかりなことは「核兵器についてツイッターを通じて述べることをトランプ氏が適切であると思っている」ことだと指摘。次期米大統領の発言には相当な重みがあり、広範囲に予測できない結果を起こしうることをトランプ氏が認識していないと批判しました。
同紙は、トランプ氏がツイッターによる「核外交」を続けるならば、核兵器をめぐる国際間の緊張をさらに高めると述べました。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)の23日付は社説で、トランプ氏の発言は、22日にロシアのプーチン大統領が軍高官らに核戦力の能力強化を求めたことに対する「ワンパターンな反応だ」と述べ、「たくましさを売りにする(軍拡)競争に没頭するのではなく、トランプ氏は核兵器の危険を減らすためのロシアとの新しい対話を探求すべきだ」と提言しました。
米紙シカゴ・トリビューン(電子版)の23日付は、トランプ氏の発言に関連して、「軍拡競争の現実の結果は双方が多大な労力や予算を費やし、より多くの核兵器を積み上げるもので、安全保障の改善に関しては何も得られない」という米国の元ウクライナ大使のスティーブン・パイファー氏の見解を報じました。
米インターネット紙ハフィントン・ポストの22日付は、米国の著名な言語学者で評論家のノーム・チョムスキー氏が、トランプ氏の発言は世界の終わりに近づく状況を象徴的に示す「終末時計」の針を、「(人類滅亡を指す)午前0時にさらに近づけるかもしれない」と警告していることを紹介しました。
核兵器廃絶を求める国際的運動体「グローバル・ゼロ」は22日の声明で、米ロの核兵器増強は核兵器の使用という「悪夢のシナリオの可能性を高めるだけだ」と非難。トランプ氏の米大統領就任が迫る中、「手遅れになる前に核兵器の破滅的な計画を防ぐこと以上に緊急なことはない」と、核兵器廃絶を求める運動の強化を呼びかけました。