2016年12月29日(木)
年金カット法で0.6%減
賃金下落で厚労省試算
厚生労働省は27日、臨時国会で成立した年金カット法で賃金が下落した場合の試算を初めて公表しました。
リーマン・ショック時の賃金下落を反映させると、新ルール導入から5年後の2026年度には、基礎年金の支給水準は0・6%減ることが分かりました。(実質経済成長率が0・4%の中間的ケース)
試算では、21年度の賃金が0・5%減、22年度は3・0%減と仮定。支給額は、26年度に導入前より0・6%減り、影響が最も大きくなりました。
現在は、物価が上昇すれば現役世代の賃金が下がっても支給額を据え置きますが、カット法では賃金下落にあわせて支給額を引き下げるためです。
一方、将来世代は、賃金上昇がずっと続けば、43年度に支給水準が0・6%増となるとしています。
厚労省はカット法強行時、賃金下落時の試算を明らかにすると表明していました。
解説
将来世代の給付減明らか
厚労省が公表した年金カットの新しい試算で、限定した条件でも、将来世代の年金額が下がる可能性があることが明らかになりました。「将来世代年金確保法案」という政府の主張がデタラメだと自ら認めるものです。
試算では、将来の所得代替率(現役世代の賃金に対する割合)が0・2〜2・5%上昇するとしています。
しかし、基礎年金の所得代替率は、年金抑制の「マクロ経済スライド」によって約3割も減ることが見込まれており、将来世代の年金水準が下落することに変わりありません。
しかも、試算は、賃金が下落するのは導入当初の2年間だけで、あとは賃金上昇が続くという非現実的な前提にたっています。国民への説明責任を果たしたとは到底いえず、カット法案実施の前提を欠いています。改めて試算を出し直し、カット法案の影響について徹底検証すべきです。
(深山直人)