2016年12月27日(火)
主張
武器防護運用開始
自衛隊の戦闘参加に道開くな
安倍晋三政権は、憲法9条を踏みにじり、自衛隊の海外での武力行使を可能にした戦争法(安保法制)に基づき、米軍部隊の武器などを守る新任務の運用を始めました。南スーダンPKO(国連平和維持活動)に派兵した陸自部隊に「駆け付け警護」などの新任務を付与したのに続き、安倍政権が戦争法の本格的運用を加速していることを示すものです。米軍が起こす戦争に、世界的規模で、切れ目なく、自衛隊が参戦する危険をいっそう高める重大な動きです。
米軍を世界規模で警護
戦争法の一環である改悪自衛隊法(以下、自衛隊法)95条の2は、自衛隊が米軍とその他外国軍部隊の「武器等」を警護し、必要があれば、その兵士や「武器等」を防護するために武器を使用することができるという新たな任務を盛り込みました。それまでは自衛隊自身が保有する「武器等」を防護する規定はありましたが、初めて米軍やその他外国軍部隊の「武器等」にまで対象が拡大されました。
自衛隊法は、「武器等」について「武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備又は液体燃料」と規定しています。政府は、昨年の戦争法案の国会審議で▽「武器等」には米軍の原子力空母や戦闘機、ミサイルなどが含まれる▽米軍部隊などの「武器等」を警護・防護するため、自衛隊は保有する全ての「武器等」を使用できる▽武器使用の判断は現場の指揮官が行う▽警護・防護の地理的範囲は限定されない―ことを認めています。
自衛隊部隊が世界のどこでも米軍部隊を警護でき、攻撃を受ければ現場指揮官の判断で武器を使用し、応戦することになります。
政府は、自衛隊法95条の2で、自衛隊が警護・防護する米軍部隊などは「現に戦闘行為が行われている現場」以外で「我が国の防衛に資する活動」を行っていることが前提であり、戦闘行為に発展しないようにしているなどと強調しています。22日に国家安全保障会議で決定した「運用指針」では、「我が国の防衛に資する活動」として▽弾道ミサイルの警戒を含む情報収集・警戒監視活動▽「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」(重要影響事態)に際して行われる輸送、補給などの活動▽共同訓練―を例示しました。
しかし、米軍は、情報収集・警戒監視活動や共同訓練を威嚇や挑発の目的で実施することがしばしばあります。「重要影響事態」とは、米軍が海外で介入・干渉戦争を起こし、自衛隊も兵站(へいたん)を行っている事態です。軍事的に挑発・威嚇されたり、米軍と交戦したりしている相手が攻撃を仕掛けてくる危険があるのは明白です。これに対し自衛隊が武器を使用することは戦闘行為そのものに他なりません。
現場の判断で事態が拡大して戦争状態となり、事実上の集団的自衛権の行使に踏み出す危険がある大問題です。
米の判断で日本が参戦
加えて深刻なのは、自衛隊の武器使用の判断は、圧倒的な情報収集能力を持つ米軍に頼らざるを得ないということです。日本が戦争状態に入るという重大事態が米軍の判断によって決まるということにもなりかねません。戦争法の本格的運用をストップさせ、廃止に追い込む共同のたたかいを大いに広げることが急務です。