2016年12月26日(月)
オスプレイ再開 「軍の都合」、安全より上
“特殊侵攻作戦に不可欠な訓練”
沖縄県名護市安部の海岸に墜落、大破した事故からわずか6日で、「機体に問題はない」と一方的に垂直離着陸機MV22オスプレイの全面飛行再開を強行した米軍。背景に、海兵隊部隊と陸軍、空軍、海軍という軍種を超えた統合作戦、なかでも空軍特殊作戦部隊などとの増大する特殊作戦演習の任務をこなすという「軍の都合」を「県民の安全」よりも優先する姿勢が色濃くあることが本紙の取材で明らかになりました。(山本眞直)
在日米軍は、軍事作戦の範囲をこれまでの「アジア・太平洋」から「インド・アジア・太平洋」に拡大、「地球規模」での統合任務作戦を重視した特殊作戦を日常化し、在沖米軍はそのための演習・訓練を強化、増大させています。
その一つが墜落、大破したオスプレイが所属する普天間基地の海兵隊部隊と空軍嘉手納基地常駐の第353特殊作戦群との統合作戦に備えて重視する「TAAR」訓練です。
TAARは最新鋭の空軍特殊作戦機MC130Jによるティルトローター機(オスプレイ)への空中給油訓練です。海兵隊は普天間基地から岩国に移駐したKC130空中給油機を常備していますが、MC130Jの嘉手納基地配備(2014年12月)以降、海兵隊と空軍の「統合演習」が目立ちます。
その象徴が今年6月末から7月21日にかけて韓国、岩国(山口県)、伊江島(沖縄県)を結んだ沖縄駐留の米海兵隊第31海兵遠征隊(31MEU)と第353特殊作戦群による「敵地で着陸可能な飛行場を強襲・奪取」する特殊作戦です。
米太平洋空軍、太平洋海兵隊のウェブサイトは、この侵攻作戦演習で「主役」を担ったのが墜落したオスプレイが所属する第265飛行隊と、同部隊機に夜間空中給油した嘉手納基地のMC130Jだったことを明らかにしています。
全面飛行再開を強行した19日、在沖米軍のトップ、ニコルソン四軍調整官は「声明」でこう強弁しました。「重要なのは操縦士の練度を維持し、同盟国を支援するために行う訓練の機会を確実に持つことだ」。オスプレイの飛行再開は、「県民不在」(翁長県知事)であり、「またどこかで(事故が)起きる。到底許されない」(稲嶺名護市長)のです。
在沖海兵隊は21日、名護市議会の抗議に「事故が戦地で起こったら大変なので、そのために沖縄で空中給油などの訓練が必要なのだ」(スコット・コンウェイ政務外交部長)と強弁。参加した日本共産党の仲里克次市議は「怒りを抑えきれなかった」といいます。