2016年12月26日(月)
司法修習生「給費制」復活
山添議員に聞く
司法修習生の給費制度について法務省が来年末から再開させる方針を明らかにしました。日本共産党の山添拓参院議員(弁護士)に聞きました。
6年ぶり、運動の成果 「市民のための法律家」国に責任
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司法試験合格者が法曹資格を得るために義務づけられる1年間の研修が「司法修習」です。修習に専念する義務を課され、公務員に準じた身分で、アルバイトなどは原則として禁止です。戦後、司法修習生には給与が支給されてきました。ところが2011年に給費制が廃止され、必要な者は借金せよという貸与制が導入されます。
本当にうれしい
今回、6年ぶりに給費制が復活する方向となり、給費制復活を求めてきた弁護士の一人としても、本当にうれしく思います。
私がこの問題にとりくみ始めたのは、司法試験を受験した10年のことです。この年から貸与制への移行が予定され、日弁連が給費制維持に向けた動きをすでに始めていました。これとは別に、当事者として給費制維持を訴える運動をしようという先輩弁護士の誘いがあり、集会に参加したところ、その集会を機にビギナーズ・ネット(法科大学院生・学生、司法修習生、若手弁護士で構成)を立ち上げることになり、私は、初代の共同代表の1人を引き受けました。
高校以来、奨学金という名の借金を抱えており、修習期間でさらに300万円の借金を背負うことに大きな不安があったのです。
日弁連やビギナーズ・ネット、さまざまな市民団体でつくる市民連絡会の3者が、署名や集会など猛烈な運動を全国展開し、10年11月には給費制を1年間継続させることができました。勝ちとった成果はもちろん、運動で政治を動かす経験と、得られたつながりは、給費制最後の世代となった私たち64期修習生にとっても大きな財産でした。
廃止の問題点は
給費制廃止には、二つの問題点があります。一つは、お金がなければ法曹になれないのかという問題です。
現にこの間、法曹志望者は激減し、最多で7万人を超えた法科大学院の受験者数は、今年度1万人を割りました。経済的負担は、法曹資格の魅力を失わせる大きな理由の一つとなっています。
もう一つは、司法の担い手は国が育てるべきだという点です。
修習中は座学だけでなく、裁判所、検察庁、法律事務所で実務に携わることで、おのおののマインドを知ります。裁判官、検察官、そして弁護士は、それぞれ立場は違っても市民の権利と自由のために仕事をする法曹です。市民のために働く法律家を育てることは、国の重要な責任であり、だからこそ戦後復興の財政難のなかでも国が給与を支払ってきました。
貸与制移行は司法制度改革の一環でした。法科大学院を設置し司法試験合格者を大幅に増やす、財源を節約するため給費制を廃止するというのです。
共産党の役割が
当時、給費制廃止に反対したのは日本共産党だけでした。04年12月1日の参院法務委員会で大門実紀史議員が鋭く本質を突いています。給費制の意義とは第一に、司法修習生に公的使命を自覚してもらうこと、第二に、貧富の格差を持ち込まないこと――こんにちに通ずる指摘であり、私たちの運動の骨格ともなってきました。
一度は廃止に追い込まれた給費制の復活は、一致点に基づく超党派の粘り強い運動によって実現にこぎつけたものですが、そこには日本共産党の果たしたかけがえのない役割が光っています。
来年度からの給費制は、支給額が月13万5000円、住居費が必要な場合に月3万5000円を追加し、修習先への引っ越し代も国が負担するとしていますが、十分とは言い難い。不足する者には貸与制との併用を促すようですが、改善が求められます。この6年間に貸与制の下で修習した者の手当ても必要でしょう。新たな給費制導入に必要となる裁判所法改正の法案審議の中で、ただしていくべき今後の課題だと考えます。