2016年12月23日(金)
17年度予算案
辺野古工事費を再計上 軍事費突出 F35実戦配備へ
高齢者負担増次々 社会保障削減 年金はマイナス改定
「通級指導」を定数化 文科省 党質問と運動実る
辺野古工事費を再計上 軍事費突出 F35実戦配備へ
2017年度予算案の軍事費では、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地本体工事費として16年度並みの536億円(歳出ベース。契約ベースで1704億円)を再計上しました。護岸工事や土砂の採取・運搬・埋め立て費用などが含まれています。
3月の和解条項で新基地工事は停止していましたが、政府は沖縄県の敗訴が確定した最高裁判決を受け、工事の早期再開を狙っています。辺野古新基地を含む米軍再編関係経費(「地元負担軽減」を口実に基地強化などを図る分)は、2011億円(16年度比245億円増)で、過去最高額を大きく更新しました。在沖米海兵隊のグアム移転経費265億円(同年度比125億円増)や、岩国基地への米空母艦載機移転902億円(同190億円増)など大幅に増加しました。
米軍「思いやり」予算も1946億円(同26億円増)を計上しました。
V22オスプレイ391億円(4機、ベル・ボーイング社)、F35戦闘機880億円(6機、ロッキード・マーティン社)など、米国製高額兵器の導入も続いています。
また、三沢基地(青森県)にF35ステルス戦闘機「臨時飛行隊」を新設。17年度中に実戦配備を開始し、18年度末に10機態勢にする見通しです。1機あたりの単価は147億円としています。
県営佐賀空港への自衛隊オスプレイ配備に伴う施設整備関連費など約30億円も計上されています。
高齢者負担増次々 社会保障削減 年金はマイナス改定
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2017年度予算案のうち社会保障関連では、高齢者を狙いうちにした負担増が盛り込まれました。3年間で自然増を1・5兆円圧縮する方針を受け、17年度予算案では概算要求で6400億円に圧縮したものをさらに1400億円削減し、5000億円の枠内に収めました。
1400億円削減の内訳(別表)をみると、医療では、医療費負担の上限を定める「高額療養費制度」で、一定以上の収入のある70歳以上(対象1400万人)の負担額を引き上げ(224億円減)、75歳以上の後期高齢者医療の保険料で、低所得者や扶養家族だった人の保険料の「軽減特例」を見直し(187億円減)。65歳以上の療養病床入院の居住費(水光熱費)を1日320円から370円に引き上げ(17億円減)ます。
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介護では、高額介護サービスの上限を3万7200円から4万4400円に引き上げ(13億円減)、介護納付金の「総報酬割」導入で40〜64歳が支払う保険料の負担増(443億円減)で、現役世代にも負担増を迫っています。
高額療養費の引き上げや後期高齢者保険料の「特例軽減」廃止は、18年度以降もさらなる負担増が決まっています。
年金は、改定率が14年度に「特例水準の解消」として以来3年ぶりのマイナス改定(マイナス0・1%)となり、年金生活者にとっては医療・介護の負担増と合わせた大打撃です。
消費税増税見送りを理由に、来年度から予定されていた、低年金者への給付金など“社会保障の充実”メニューは軒並み見送られました。唯一、実施される年金支給資格期間の短縮(25年から10年、256億円計上)だけでは、低年金にあえぐ高齢者の生活を改善するには程遠いものです。
隠れ待機児に及ばず 保育所整備 企業主導型は大幅増
17年度予算では、待機児童解消に向けた取り組みの推進として、1013億円(対前年度比31億円増)が計上されました。受け皿拡大として、自治体計画を積み上げた4・6万人分の整備に710億円が計上されていますが、対前年度比では39億円減。“隠れ待機児童”が6万7千人おり、保護者が求める認可保育所の抜本増設には程遠い内容です。
育休終了後の入所枠を確保する「入園予約制」の導入や、「サテライト型小規模保育所」の設置に前年度比71億円増の93億円が計上されています。
一方、認可外施設である「企業主導型保育」には、513億円増の1313億円が計上されました。安倍政権は今年度を含めた2年間で5万人分を整備する構えで、保育水準の向上にはつながらないものです。
「通級指導」を定数化 文科省 党質問と運動実る
2017年度文部科学省予算案では、毎年度予算措置する加配定数で対応してきた発達障害のある子どもなどへの「通級指導」を担当する教員について、基礎定数化することが盛り込まれました。文科省は義務標準法の改正案を通常国会に提出する方針。教職員増を求める父母・教職員の運動や日本共産党国会議員団の質問が実った形です。
予算案は、来年度から10年間で加配定数(今年度約6・4万人)の約3割を基礎定数化すると明記。来年度分として「通級指導」の教員602人、外国人の子どもを指導する教員47人を基礎定数化します。ほかに指導方法工夫改善加配の一部(約9500人)などを基礎定数化します。
この結果、教職員定数の改善は868人増(19億円)となりました。ただし少子化や学校統廃合に伴う自然減として4150人の減少を見込んでおり、全体として3282人減となっています。
この間、財務省は「通級指導」などについて「学力向上は認められない」と否定的でした。日本共産党国会議員団は「成果を学力などに矮小(わいしょう)化すべきでない」(大平喜信衆院議員)などと追及。毎年加配で対応してきたこともあり、財務省も「加配では安定的な運営はできない」と改善を認めました。