2016年12月20日(火)
主張
医療・介護負担増
暮らし破壊の削減路線転換を
安倍晋三政権が22日予定する2017年度予算案の閣議決定に向け、医療と介護の負担増案をまとめました。70歳以上の高額療養費の上限引き上げ、75歳以上の後期高齢者医療制度の保険料軽減措置の縮減、療養病床に入院する65歳以上の光熱水費引き上げなどが大きな柱です。収入の頼みである年金は目減りする中で、体力が衰え病気になりがちな高齢者や、その家族に打撃を与えるものです。格差と貧困が広がりをみせるもとで、国民の暮らしをますます疲弊させる医療・介護の負担増を行うべきではありません。
「自然増カット」ありき
自民・公明の与党が先週まとめた医療・介護の負担増案は、世論の批判を浴び、当初検討されていた厚生労働省案より引き上げ規模は“緩和”されたものの、窓口払いの面でも月々の保険料の面でも、高齢者に新たな負担を求めることに変わりありません。
医療機関の窓口で払う医療費が膨らんだ場合、所得や年齢などに応じて支払いの上限額を定めた高額療養費制度では、70歳以上の上限を段階的に引き上げるとしました。負担増の対象は1400万人以上にのぼります。例えば、年収約370万円未満の課税世帯では、現在の月1万2千円の外来上限を17年8月にまず2千円上げ、18年8月にまた4千円上げて1万8千円にします。当初の倍増案より緩和したとはいえ、けがや病気をしがちな高齢者が、ふところ具合を気にして受診を見合わせる事態が相次ぐことが危惧されます。
後期高齢者の保険料軽減の縮小も、扶養家族の人のなかで保険料が10倍になるケースが生まれるなど暮らしへの影響は計り知れません。療養病床に入院する65歳以上の光熱水費の引き上げでは、これまで負担がなかった医療の必要性が高い人にまで月1万円以上の負担増を強いる、容赦ないものです。費用がまかなえず退院を余儀なくされる人が生まれかねません。
介護保険でも自己負担の上限額を引き上げるなどとしています。
政府・与党が今回縮減しようとする負担軽減の仕組みは、高齢者の心身の特性や生活の実態を踏まえたものと政府自身が説明してきたものです。しかし、安倍政権は、17年度予算案で社会保障費の「自然増」分を、概算要求時点よりさらに「1400億円」カットすることを揺るがない方針にしています。「カット分」をねん出するため、医療で約1000億円、介護で約400億円を削減するとして、制度の成り立ちや経過のまともな検討もなく、「削減ありき」で手当たり次第に国民負担増を押し付けようというのです。「自然増」を機械的にカットするやり方が、暮らしを無視したものであることを浮き彫りにしています。
社会保障“敵視”許さず
安倍政権が15年に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」は、“社会保障給付の増加を抑制することは、経済成長に寄与する”という認識まで示していました。国民の暮らしを支える土台である社会保障を邪魔者扱いする、あまりにも冷たい考えです。
負担増による受診抑制で一時的に医療費が減っても、患者が重症化すればむしろ医療費は増加します。安倍政権の乱暴な負担増をやめさせ、安心の社会保障への拡充へ転換させることが必要です。