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2016年12月19日(月)

主張

デジタル教科書

有償前提の導入はありえない

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 小中高校で現在使われている紙の教科書に加え、電子データをタブレット端末などで閲覧するデジタル教科書を授業で使う動きが進んでいます。文部科学省の検討会議が今月、最終報告をまとめ、2020年から予定の新学習指導要領実施に合わせて導入する方針を打ち出しました。しかし、費用負担の問題、活用方法や教育的効果、健康への影響など多くの問題を抱え、教員や専門家を含む国民的な議論が必要です。

危惧される多くの問題点

 最終報告では、デジタル教科書は、紙の教科書と同一の内容を電磁的に記録したものと定義されています。導入した場合、紙の教科書を使うことを基本にし、教科の一部についてデジタル教科書を使用します。導入は各教育委員会の判断で決定し、どの程度デジタル教科書を使用するかは「教育委員会の管理のもと、各学校の状況や意向を十分踏まえた活用の仕方」になるとしています。

 とりわけ費用の負担は重大な問題です。最終報告は、「(デジタル教科書を)無償措置の対象とすることは、直ちには困難」とし、義務教育でも保護者の負担になる可能性があるとのべています。

 教科書無償制は義務教育の無償を定めた憲法にのっとったものです。有償になればその原則を根底から崩すことになります。また、家庭の経済状態などによってインターネットなどの情報環境には差があります。デジタル教科書の導入で子どもの学習環境の格差がさらに広がることも心配です。

 新しい技術を有効に活用することは重要です。デジタル教科書は音声や動画などと一体で活用でき、英語や理科・算数などでの学習効果が期待される面があります。文字の拡大や読み上げの機能などは視覚障害の子どもなどの学習にとって有効ともいわれています。

 一方で、問題点も指摘されています。10年には情報処理学会など8団体が連名でデジタル教科書についての要望を文科省に提出しました。デジタル教科書の導入が「手と頭を働かせて授業内容を記録し整理する活動」「児童・生徒どうしが直接的に考えや意見を交換しながら進める学習活動」などの縮減にならないよう求めています。鮮やかな映像や動画で「分かったつもり」にさせられ、実物を観察したり、手で作業したり、議論したりすることがおろそかになり、知識や能力が身につかないことが危惧されているのです。

 国は「アクティブ・ラーニング」の推進のためにデジタル教科書をふくむICT教材の使用を強調しています。しかし、プログラム通りの学習は教育をいっそう画一化し、子ども不在の表面的な学習となるおそれがあります。

 さらにデジタル画像の長時間使用による子どもの目や脳、体など健康への影響も検証が必要です。

教育無償の憲法原則守れ

 国がデジタル教科書を急ぐ背景には、情報産業などが市場拡大を狙っている背景があります。それと引き換えに義務教育無償の憲法原則を崩す有償化を認めるなど断じてあってはならないことです。

 たとえ有償を無償に転換したとしても、デジタル教科書自体の効果と問題点については、教員をはじめとして多角的で十分な検討が必要です。有償を前提とした性急な導入の中止を求めます。


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