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2016年12月18日(日)

主張

日ロ首脳会談

原則なき交渉では打開できぬ

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 安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領との2日間にわたる日本での首脳会談で、大きな焦点だった日ロ領土問題はまったく進展がみられませんでした。安倍首相は会談直後から複数のテレビ番組にかけもち出演し、“成果”をさかんに宣伝しましたが、領土問題での前進を願った国民からは失望や不満の声が上がっています。日ロ間で首脳間の「信頼」を強めたり、「経済協力」を進めたりすれば領土問題打開の道が開けるかのようにいう安倍政権の対ロ交渉方針の行き詰まりは深刻です。

「共同経済活動」に懸念

 安倍首相はプーチン大統領との記者会見で、択捉、国後、歯舞、色丹の4島で「共同経済活動を行うための『特別な制度』」についての交渉開始を表明し、医療、エネルギーなど8項目の推進で合意したことを明らかにしました。領土の帰属問題では「プレス向け声明」で言及はなく、首相は「まだまだ困難な道が続く」と述べました。

 ロシア側の強く求める「経済協力」に応じることで、領土問題での解決につなげようというのが安倍政権の思惑ですが、それは「新しいアプローチ」というより、過去にもおこなわれたやり方です。

 「共同経済活動」は、1990年代から浮上した考えです。98年に当時の日ロ政府間に「共同経済活動委員会」が設置され、4島の経済活動を「双方の法的立場を害することなく」実施できるか検討されたものの、法律適用をめぐり折り合わず実現しませんでした。

 今回は「特別な制度」の下で行うと安倍首相は強調しますが、その文言は「声明」にはなく条件や形態などが今後の協議でまとまるかは不透明です。ロシア側は「共同経済活動」について「ロシアの主権の下で行われる」という姿勢をとり続けています。具体化を進める中で、領土に対する日本の主権が制限されたり、損なわれたりすることが懸念されます。

 ロシアのウクライナへの侵略行為であるクリミア併合でG7(主要7カ国)が経済制裁を行う下で「経済協力」を進めることは、国際的な枠組みを崩す結果となりかねません。ロシアを「日本は事実上対ロ制裁から離脱した」(元駐日大使)と喜ばせるものです。

 日ロ領土問題の根本は、「領土不拡大」という第2次世界大戦の戦後処理の大原則を踏みにじり、ヤルタ協定(1945年)で米英ソがソ連への「千島列島引き渡し」を決め、それに拘束されてサンフランシスコ条約(51年)で日本政府が「千島列島の放棄」を宣言したところにあります。この戦後処理の不公正にメスを入れることこそ不可欠です。プーチン大統領は会談前、ヤルタ協定を前提に「領土問題は存在しない」とまで公言しました。ところが安倍首相はロシア側の問題をただすどころか「それぞれの正義を何度主張し合っても、解決することはできない」という態度に終始しました。

国際的に通用する立場で

 日ロ領土問題解決に必要なのは、日本が国際的に通用する確かな交渉の立場と論建てを確立することです。千島列島の全面返還を内容とする平和条約の締結、北海道の一部である歯舞と色丹の中間的な友好条約での速やかな返還を求めるべきです。この基本的立場を持たない日本政府の領土交渉からの抜本的転換こそが必要です。


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