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2016年12月14日(水)

ブレーキ痕なし プリウスで何が?

病院にタクシー突入の死傷事故 福岡

国交省に苦情 「制動装置」264件

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 福岡市の病院に個人タクシーが突っ込み10人が死傷した事故から11日。原因はいまだに解明されていません。なぜこのような事故が起きたのか徹底究明が必要です。(遠藤寿人)


写真

(写真)車両の緊急停止を指示するプリウスの取扱書(トヨタのホームページから)

(拡大図はこちら)

徹底究明急げ

 事故を起こしたのはハイブリッド車(エンジンと電気モーターを動力源とする車)の代名詞トヨタ「プリウス」(型式DAA―ZVW30。2010年6月製造)。今年6月に車検に合格。3カ月ごとの定期点検でも異常はありませんでした。

 国土交通省によると同車は、今年6月と2014年2月に燃料装置や電気装置の欠陥によるリコール(回収・無償修理)がありましたが修理済み。2010年と13年のブレーキに関するリコールで同車は「対象外」だったとしています。

健康異常なく

 運転手の男性(64)は、94年9月に個人タクシーの事業許可を取得。健康状態は問題なく、アルコールも検出されませんでした。

 運転手は病院から一本道で約350メートル離れた公園付近から「ブレーキが利かなくなった」と供述しています。病院付近にブレーキ痕はありませんでした。車は300メートル以上も暴走したのか? 自動車業界関係者は「運転技術があるタクシーの運転手が20〜30メートルならまだしも、300メートルも暴走して、その間、何も手を打てなかったのは奇妙だ」と話します。

 今回の事故の原因は不明ですが、同型式をめぐっては…。国交省はユーザーの苦情を同省が開設する「自動車のリコール・不具合情報」で開示しています。「プリウス」「制動装置」で検索すると、2002年8月〜16年8月まで264件の苦情がありました。

 うち「ブレーキの利きが悪くなった」「ブレーキが利かなくなった」と訴える苦情は93件。「ブレーキが抜ける」は35件。合わせると128件(48%)になります。

 同様に「プリウス」「エンジン」を検索すると2001年8月〜16年8月まで90件の苦情がヒット。うち「急加速」「エンジンの吹け上がり」が17件(18%)ありました。

 同省自動車局審査・リコール課は「苦情の中身を吟味し、ブレーキが利かない、火災に至るとか、危険事象はディーラーやメーカーに照会をかけ事実関係を聞いている」と話します。

緊急時対処法

 一方、「万一、車が止まらなくなったときの非常時のみ、次の手順で車両を停止させてください」―。トヨタはプリウスの「取扱書」2010年版で「緊急時の対処法 車両を緊急に停止するには」を説明しています。(1)ブレーキペダルを両足でしっかりと踏み続ける(2)シフトポジションをNにする。Nにならない場合は、可能な限り減速させ、パワースイッチを3秒以上押し続けてハイブリッドシステムを停止する―など手順を指示。

 走行中にハイブリッドシステムを停止するときは、「ブレーキの利きが悪くなりハンドルが重くなるため、車のコントロールがしにくくなり危険です」と「警告」しています。

 トヨタ自動車東京本社広報部は「事故については捜査中なので具体的な内容については差し控える。『取扱書』については、通常は暴走などの具体的な不具合を想定しているわけではない。予期せぬ事態が起こった時に備えて、それに対処するために記載しているだけ」と答えます。


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