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2016年12月13日(火)

主張

ベースロード市場

原発温存支援の新たな手口だ

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 東京電力など大手の電力会社が原子力発電所や石炭火力発電所などで発電した電力を、原発などを持たない「新電力」に売り渡す「ベースロード電源市場」創設の動きが本格化しています。経済産業省が検討してきたもので、「新電力」に電力を供給することを口実に、原発を温存し、同時に「新電力」にも原発事故の処理費用を分担させる狙いです。東京電力福島第1原発事故に伴う廃炉や除染、賠償などの負担は巨額に上ると見積もられています。原発温存と一体になった電力業界支援の新たな仕組みを持ち出すのは許されません。

脱原発の願いに反して

 「ベースロード電源市場」の創設は、経産省が9月に総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)に設置した有識者会議「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」が「市場整備ワーキンググループ(WG)」で検討、中間報告で打ち出したものです。大手の電力会社が原発などで発電した電力を、販売価格を多少抑えて、太陽光・熱や風力などで発電している「新電力」に、販売量全体の3割程度提供するとしています。

 「新電力」はもともと、電力会社が独占していた発電を開放し、太陽光など化石燃料に依存しない再生可能エネルギーの開発を促進していくためにも進められてきたものです。新しい市場の創設で規模拡大が可能になる「新電力」もある半面、原発に依存したくないからと「新電力」に切り替えた人も多いのに、「市場」を通じることで原発が発電した電力まで買わされるのでは、利用者の願いに反することになります。

 経産省が新しい市場を「ベースロード(基幹的な)電源市場」と呼ぶのは、太陽光や風力の発電は季節や天候で不安定だといいたいためですが、その対策には今ある「卸電力取引所」などで「新電力」が電力会社などの余った電力を安定して買える体制を整備すればいいことです。わざわざ原発などで発電した電力を販売する「ベースロード電源市場」を創設し、価格などで釣って「新電力」に買わせるというのは、原発温存・支援策以外の何物でもありません。

 背景には「新電力」の進出で大手電力会社などの経営が脅かされているのに加え、東京電力福島第1原発事故後の除染や賠償、廃炉などの費用が膨らみ、東電以外の電力会社も費用の分担や積み立てが求められているため、少しでも電力会社の売り上げを増やすとともに、「新電力」にも負担を押し付けたい思惑があります。安全よりも経営を優先する電力会社の姿勢と、それに手を貸す経産省・安倍政権の姿勢は言語道断です。

国民に巨額負担押し付け

 経産省が「電力システム改革貫徹」の小委員会と同時にスタートさせた財界人などの「東電改革・1F(福島第1原発)問題委員会」の審議も大詰めです。経産省は21・5兆円に上る除染、賠償、廃炉などの費用を、国からの援助だけでなく、「新電力」にも負担させて賄おうとしています。原発事故の処理費用はまず事故を起こした東電が負担すべきなのに、その点をあいまいにして、国民に押し付けるのは許されません。

 国と東電に総力を挙げた事故収束と廃炉を求めるとともに、原発を温存しない、「原発ゼロ」への決断がいよいよ重要です。


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