2016年12月10日(土)
主張
TPP承認・関連法
この可決の強行は禍根を残す
環太平洋連携協定(TPP)の承認案と関連国内法案の可決が参院で強行され、与党などの賛成で承認・成立しました。TPPは日本が批准してもアメリカのトランプ次期大統領が「離脱」を明言している以上発効の見込みがなく、関連法もTPPが発効しなければほとんどの内容が施行されません。世論調査でも徹底審議を求める声が圧倒的で、強行の道理はありません。発効・施行の見込みがないのに可決を強行するのは無責任なだけでなく、国会決議にさえ違反した協定を今後の交渉の土台にしかねない危険な暴走です。
国会決議違反の暴走協定
TPP承認案は衆議院で可決が強行されたため、憲法の規定によれば参院で可決されなくても自然承認になる見通しでしたが、自民・公明の与党は可決を強行しました。関連法案は自然承認にならないため、同時に可決されました。
日本、アメリカなど12カ国で関税の撤廃などを取り決めたTPPは、もともと安倍晋三政権が総選挙での自民党の「反対」の公約を踏みにじって、交渉参加を決定したものです。国民に一切内容を明らかにしないで密室の交渉を繰り返したあげく、昨年10月になって「大筋合意」したと、結果だけ国民に押し付けてきました。
その後も国会で協定の承認を求めるのに、協定や付属文書の一部しか日本語に翻訳して提出せず、肝心の交渉経過については「黒塗り」の資料しか提出しないなど、国会の審議無視で強行を重ねてきました。TPP交渉を取り仕切った甘利明担当相が「口利き」疑惑で辞任したため、交渉内容を説明できないという異常ぶりです。
日本経済全体では国内総生産(GDP)は拡大するが、農業への影響はたいしたことがないようなごまかしの試算を振りまき、拡大するコメ輸入については、現在のSBS(売買同時入札)米が輸入業者からの調整金で国産米より安く売られていると指摘されても調査さえしませんでした。
TPPの交渉参加にあたって国会は、コメ、麦、牛豚肉など重要農産物は「除外」することや、交渉経過を情報公開することなどを求めています。重要農産物5項目でさえ3割近い品目で関税を撤廃し、無傷なものはほとんどないTPPが、国会決議に違反するのは明らかです。交渉内容の情報公開の約束も守られていません。
安倍首相は国会決議に違反するかどうかは国会が決めることだと繰り返しました。そうした検証も行わないで、TPPの承認と関連法案の可決を強行した与党の責任は、厳しく批判されるべきです。
発効せずとも危険は明白
安倍首相は発効の見通しもないのに日本がTPPを承認する理由について、「日本がTPP並みの高いレベルのルールをいつでも締結する意思があることを示すためだ」といいます。TPP離脱の意思を示しているトランプ次期米大統領は2国間の貿易交渉を行うとしています。TPPを国民に押し付けたうえ、関税撤廃などの原則で2国間交渉をやろうというのでは大幅譲歩を求められることにしかなりません。首相はTPP残留でトランプ氏を説得するといいますが、それこそ危険は明白です。
暮らしも主権も破壊するTPPに固執せず、平等・互恵の経済関係の確立をこそ、実現すべきです。