2016年12月9日(金)
高齢者に軒並み負担増
社保審部会 医療見直し案了承
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高齢者を狙い撃ちにした医療費の負担増と給付減を盛り込んだ最終整理案が8日の社会保障審議会医療保険部会で了承されました。委員から「一つの結論に収れんしていない」(連合)と批判が出ましたが、座長が大筋了承されたとして取りまとめました。
自己負担の上限を定めた「高額療養費」について、70歳以上で住民税を払っている1400万人について、69歳以下と同水準に引き上げます。
外来のみの上限特例も廃止・縮小し、年収約370万円以上は、月約4万4400円の自己負担を最大25万2600円に引き上げ。それ以下の一般世帯も入院時は月4万4400円を5万7600円に上げます。
75歳以上の後期高齢者医療の保険料「特例軽減」について、低所得者などに「一定の配慮を行う」とした上で扶養家族だった人に対する軽減措置も含めて17年度から段階的に廃止。後期高齢者医療制度反対の世論に押されて導入した軽減措置を廃止する暴挙です。
療養病床に入院している65歳以上には、居住費(水光熱費)を1日320円から370円に値上げ。食費と合わせ月5万2500円もの負担を課します。
子どもの医療費助成に対する国の罰則措置(国民健康保険の国庫負担減額)については、見直し対象を未就学児までに限定。住民や自治体が求める国による就学前までの無料化には背を向けました。
「かかりつけ医」以外を受診した際の追加負担や「市販類似薬」の保険外し・縮小は見送り、「引き続き検討する」としています。
委員からは「居住費の値上げなど反対意見を抜いているのはバランスに欠ける」(連合)と批判が出ました。
解説
高齢者の貧困に拍車
社会保障審議会医療保険部会で8日に了承された医療制度の見直し案は、“下流老人”といわれるほど深刻な高齢者の貧困化に拍車をかけるものです。
70歳以上の自己負担の引き上げや75歳以上の保険料「特例軽減」の廃止など高齢者を狙い撃ちにした負担増です。しかし、75歳以上で年金収入が年80万円以下の人は4割を超えています。負担増が受診抑制を招き、重症化でかえって医療費が増えることは明白です。
政府は「世代間の公平化」の名で正当化していますが、最終案では今後、現役世代に対する入院居住費の導入や、「かかりつけ医」以外を受診した際の追加負担を検討することが盛り込まれました。結局は老いも若きにも負担増を迫り、高い方に合わせるご都合主義でしかありません。
大本には、「医療崩壊」を引き起こした旧・小泉政権を上回る社会保障の削減路線があります。毎年5千億円の自然増分を削る方針に基づき、来年度予算で1400億円を削る狙いがあるからです。
しかし、見直し案には与党から「負担増は影響が大きすぎる」「現状維持にすべきだ」と意見が噴出。厚労省は「与党との議論を踏まえ来年度予算編成を行う」とのべ、早くも見直しに追い込まれており、国民との矛盾は避けられません。
貧困を拡大する負担増はきっぱり撤回し、公的医療保障の再生・拡充に転換することこそ求められています。
(松田大地)