2016年12月6日(火)
きょうの潮流
もし、“暴言・流行語大賞”なるものがあるとしたら、1票投じたかった。「政府が右というものを左とはいえない」。NHK籾井勝人会長の2年前の就任記者会見での弁です▼深刻なのは暴言にとどまらず、実際に影響を及ぼしたことです。増幅する安倍政権寄りのニュース報道。ドキュメンタリー番組の局内試写に幹部が出席し、チェックするようにもなりました▼籾井氏の任期は来年1月まで。本人の再任のねらいはかなわず、退任が確実に。先週のことです。会長の任命権を持つ経営委員会の12人中、再任に必要な9人以上の同意が得られない状況に陥ったからです▼受信料で成り立つNHK。視聴者の間で籾井氏支持は皆無といっていいほどです。籾井体制が続けばNHKの財政基盤を揺るがしかねません。経営委員会の判断もそのあたりの事情があったと思われます▼しかし、経営委の中で、次期会長選考を含めてどんな論議があったかは公表されません。市民らがもの申して立ち上がりました。「籾井会長の再任絶対反対」「市民の意向を反映して公募・推薦制の導入」を求めています。全国27の市民団体が呼びかけ、賛同署名は3万5千人に達しました▼戦前、政府の監督下にあったNHKは1945年の敗戦を機に再出発。初代会長は学者の高野岩三郎でした。選出したのは有識者や実業家で構成する放送委員会。当時、高野会長は「国家権力からの独立」を訴えました。公共放送をめぐる70年前の歴史をしっかりと引き継ぐ時です。