2016年12月5日(月)
格差と貧困 中間層の疲弊どう克服
経済民主主義の改革を提案
激動の時代に 27回党大会決議案から
日本共産党第27回大会決議案は「格差と貧困の拡大、中間層の疲弊をいかに克服するかを、国の経済政策の基本にすえる必要がある」と提起しています。歴代自民党政権のもと弱肉強食の新自由主義の経済政策によって、あらゆる分野で格差と貧困が拡大しました。それをいっそう深刻にしたのが「アベノミクス」(安倍晋三政権の経済政策)です。このままでは日本の社会と経済が立ちゆかなくなります。決議案はこの大問題に真正面から取り組む改革を提案しています。
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格差問題について決議案は「“富裕層への富の集中”、“中間層の疲弊”、“貧困層の拡大”の三つの視点」から分析しています。
■富裕層に富集中
「超富裕層」1世帯当たりの資産保有額が倍増しました。野村総研の推計によると、預貯金や株式など純金融資産の保有額が5億円を超える「超富裕層」が所有する総保有額は1997年の52兆円から、13年には73兆円にまで膨れ上がっています。1世帯あたりの保有額は6・3億円から13・5億円に倍増しました。大株主への巨額の配当に加え、「異次元の金融政策」など「株価つり上げ政治」による株式の値上がり益がもたらされた結果です。
■中間層の疲弊
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国民の所得が全体として低下する中で、中間層の疲弊が深刻になっています。労働者の平均賃金は国民の実感に近い名目値で1997年の432万6千円をピークに2015年には377万円へ55万6千円も減少しました(厚生労働省「毎月勤労統計調査」)。国税庁「民間給与実態統計調査」から、97年から2015年にかけての給与階級別の構成の変化を見ると、年収500万〜1000万円の層が1368万人から1158万人へ210万人も減少しました。同じ期間に、年収500万円以下の層は2895万人から3427万人へ532万人増加、年収2000万円を超える層も15万人から21万8千人に増えています。非正規雇用労働者の増大で、低賃金労働者が増え、中間層がやせ細っています。
■貧困層の拡大
貧困層が拡大し、先進国の中でも「貧困大国」になっています。相対的貧困率が高い水準で推移しています。相対的貧困率とは、世帯人数を考慮して算出した等価可処分所得を金額順に全世帯分を並べて真ん中に当たる額(中央値)の半額以下の所得しかない世帯の割合です。1997年に14・6%だった日本の相対的貧困率は2012年には16・1%まで上昇し、経済協力開発機構(OECD)34カ国の中で下から6番目になりました。子どもの貧困率も同じ期間に13・4%から16・3%に上昇しました。貧困世帯の児童数は328万人に上ります。
山形大学の戸室健作准教授の調査によると、働きながら生活保護水準以下の収入しかない世帯は1997年の4・2%から2012年は9・7%に倍増しました。日本銀行に事務局を置く金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、2人以上の世帯で金融資産をもたないという世帯は16年に30・9%と4年連続で30%を超えました。1997年の10・2%から3倍に増えています。
貧困は特別な事情ではありません。倒産や失業、リストラ、病気、親や家族の介護などで職を失えば誰もが陥りかねません。
決議案は「格差と貧困をただす経済民主主義の改革」として四つの改革を提案しています。
格差と貧困 アベノミクスでさらに深刻に
安倍政権が目指す「世界で一番企業が活躍しやすい国」は、企業が栄えるために国民生活を犠牲にしています。その結果、格差と貧困はさらに深刻になりました。
アベノミクスの「大胆な金融政策」は円安と株高で大企業の利益を増やす一方、輸入物価の上昇などによって食料品や日用品の価格を引き上げ、国民生活を苦しくしました。「機動的財政運営」は消費税増税を前提に、大型公共事業を増やし、大企業の税負担を減らすものでした。「成長戦略」の名で、労働者派遣法を改悪し、「正社員ゼロ」「生涯派遣」へと道を開きました。労働基準法の改悪で、「残業代ゼロ」制度の導入を狙います。
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アベノミクスのもと、大企業は3年連続で「史上最高益」を更新し、大株主など富裕層にも巨額の富がもたらされました。
その一方で労働者の年間賃金は物価変動の影響を取り除いた実質値で2012年の377・7万円から360・2万円へと3年で17・5万円も減少しました(厚生労働省「毎月勤労統計」、パート含む)。総務省「家計調査」によると2人以上の世帯の消費支出は実質で2月の「うるう年効果」を除くと、15年9月から14カ月連続で前年同月を下回っています。
日本共産党提案 四つの改革
(1)税金の集め方の改革―「能力に応じて負担する、公正・公平な税制」
消費税増税は、景気を悪化させるだけでなく、格差と貧困の拡大に追い打ちをかけます。消費税率10%への増税を中止し、大企業と富裕層に負担を求め、「消費税に頼らない別の道」に転換します。
(2)税金の使い方の改革―「社会保障、若者、子育て支援中心の予算」
予算によって所得を再配分し、格差と貧困を是正するのが当たり前の姿です。軍拡や大型開発中心の予算にメスを入れ、社会保障の拡充や認可保育園の増設、大学授業料の値下げなど、格差と貧困の是正につながる予算を増やします。
(3)働き方の改革―「8時間働けばふつうに暮らせる社会」
安倍政権は「働き方改革」といいながら、長時間労働や、低賃金で不安定な「使い捨て」労働の拡大など、労働法制の改悪をさらに進めようとしています。長時間労働の規制、非正規から正規への転換、大幅賃上げなど、働き方の改革は格差と貧困の根本的是正に道を開きます。
(4)産業構造の改革―「大企業と中小企業、大都市と地方などの格差を是正」
中小企業を「日本経済の根幹」に位置づけます。農産物の価格保障・所得補償を抜本的に強化し、安心して再生産できる農業の土台をつくります。