2016年12月1日(木)
最賃15ドルを!全米で行動
政府に要求
“貧困は自然になくならぬ”
【ワシントン=洞口昇幸】米国の最低賃金の時給15ドル(約1685円)までの引き上げを求めて労働者や市民が11月29日、米各地でストライキなどを行いました。4年前から本格化した最賃引き上げ運動は、州や市などで引き上げの成果を獲得。参加者は全米規模での時給15ドルの実現を求めて、トランプ次期米政権下でもたたかい続ける構えです。
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この日の行動は、運動団体「ファイト・フォー・15ダラーズ(15ドルを目指すたたかい)」が呼び掛けました。「われわれは引き下がらない」をスローガンに、全米340カ所で行動を計画しました。
首都ワシントン近郊のレーガン空港では、空港で働く契約従業員や労働組合関係者が、他の業種の労働者や市民らとともに集会を開催。「貧困は(自然には)飛んでいかない」などのプラカードを手に、デモ行進しました。
「生活苦しい」
デモに参加したザマイカン・アグエスさん(42)は、空港の荷物取扱係で、清掃の副業もしています。「寝る間も惜しんで働いていますが、3人の子どもがいるので生活が苦しい」といいます。現在の時給は約8ドル(約899円)ですが、「時給15ドルになれば、息子や娘と過ごす時間も増えるし、動物園や博物館にも連れて行ける」と語りました。
労働組合職員のパトリックさん(33)は、「今の政府規定の最賃では成人一人が生活するのも大変で、養う家族がいれば貧困に陥ってしまう。政治的立場に関係なく取り組まなければならない問題だ」と述べました。
米政府規定の最賃は現在時給7・25ドル(約814円)。オバマ現大統領は政府規定の最賃引き上げを提案してきましたが、議会で多数を占める現野党の共和党が反対し、実現できませんでした。
最低賃金15ドルを求める運動は、2012年11月にニューヨーク市のファストフード業の労働者など数百人が始めました。その小さな運動が、貧困と格差に苦しむ人々の共感を得て大きく成長してきました。
これまでワシントン州シアトル市や、カリフォルニア、ニューヨーク両州など、いくつかの地方自治体が最賃を時給15ドルに段階的に引き上げることを決定。米国では州や市などが独自に最賃を定めることができます。
大統領選でも
同運動の拡大と成果は、大統領選にも大きなインパクトを与えました。民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官は、当初公約とした最賃時給12ドルの実現から、15ドルを容認する姿勢に転換。同氏に競り勝った次期大統領の共和党のトランプ氏も選挙戦後半、最賃時給10ドルまでの引き上げを支持すると述べました。
レーガン空港での集会に一市民として参加したジュディス・マッカランさん(66)は、「最賃引き上げは消費購買力も高め、経済活性化にも効果的だ。たたかいの継続でトランプ次期政権に最賃を引き上げるよう圧力をかけていきたい」と語りました。