2016年11月27日(日)
安倍首相の外遊報告への井上議員の質問
参院本会議
日本共産党の井上哲士議員が25日の参院本会議で行った、安倍晋三首相の外遊報告に対する質問(要旨)は次の通りです。
TPPとトランプ氏
この間の総理の外交は、多国籍企業の横暴による格差と貧困の拡大、環境破壊等から国民の命とくらしを守るたたかいが各国で広がり、米国でもそうした世論とたたかいを背景に、TPP(環太平洋連携協定)からの離脱を公約にしたトランプ氏が次期米大統領に当選するという情勢の下で行われました。
「自由貿易」の名のもとに進められたこの間の一連の国際条約そのものが、国境をこえた多国籍企業のもうけを最大化するためのものになっており、そのもとで農業や食の安全、環境、雇用が脅かされ、ISDS(投資家対国家紛争解決)条項で主権が侵害されるという事態が生まれているという認識はありますか。
今求められているのは、グローバル化のもとで多国籍企業の利益優先により現に引き起こされている格差や不平等の解消のために、国際社会で何をなすべきか話し合い、実行することです。
総理はトランプ次期大統領と会談し、「ともに信頼関係を築いていくことができる、そう確信の持てる会談だった」と述べ、その後、「TPPは米国抜きでは意味がない」とまで述べました。ところが、その直後にトランプ氏が、TPPからの離脱を行うと正式に表明しました。協定が発効しないことが確実になったにもかかわらず、日本が批准をすることにこそ「意味がない」のではありませんか。
いったん離脱を決めた後、米国は、2国間のFTA(自由貿易協定)を日本に求めてくるか、米国にさらに有利になるように再交渉を求めてくることになるでしょう。総理があくまでもTPPに固執し、米国をTPP枠につなぎとめようとするならば、日本自らが米国に有利で、より日本に不利な「不平等条約」を求めることになるのではありませんか。
行政府による外国との条約締結の承認の是非を判断するのは、憲法上の国会の役割です。しかし、審議の段階においてすでに発効の見込みがないことが明らかな条約について、国会が承認を求められることは異常なことです。TPP強行のための会期延長はやめ、廃案にすべきです。
日ロ領土交渉
日ロ首脳会談について、ロシアのプーチン大統領は、歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島での「共同経済活動」について協議したと明らかにしました。この「共同経済活動」が、日ロの領土の画定をあいまいにしたままのものならば、領土問題の真の解決に逆行する無原則な取引であり、重大な禍根を残すものとなります。
日ロ領土問題の根本は、旧ソ連のスターリンが、「領土不拡大」という連合国が繰り返し宣言した第2次世界大戦の戦後処理の原則を踏みにじり、1945年のヤルタ協定で対日参戦の条件として「千島の引き渡し」を決め、それに拘束されて1951年のサンフランシスコ平和条約で日本政府が「千島列島の放棄」を宣言したことにあります。
戦後処理の原則であった「領土不拡大」という国際的道理に立ち戻って是正することこそが求められています。
原発輸出
ベトナム国会は、同国での原子力発電所の建設計画を白紙撤回するという政府決定を承認しました。事故原因の究明も終わらず、今なお多くの人々が避難を強いられている福島第1原発事故がもたらした惨害をみれば、ベトナムの国民から反対の声が上がるのは当然のことです。
にもかかわらず総理は、「世界一安全な基準」だとして国内原発の再稼働推進とともに、海外への原発輸出を推進しています。国内の再稼働反対の世論が多数であるのみならず、海外でも日本の原発が現地の住民に拒絶されたことを重く受け止めるべきです。