2016年11月24日(木)
主張
「混合介護」論議
公的制度に大穴を開ける危険
安倍晋三政権の下で、「混合介護」の弾力化についての議論が活発化しています。介護保険の公的サービスと、保険外サービスを組み合わせる「混合介護」について、制限を取り払うというもので、公正取引委員会が9月に「弾力化」を求める提言を発表し、政府の規制改革推進会議は、保険・保険外サービスの「柔軟な組合せ等」の検討をすすめています。介護保険改悪によって保険給付を縮小・後退させ、介護を営利企業のもうけの場に広げる思惑とも一体の動きです。お金のあるなしで介護サービスの格差を拡大させることは、国民の願いに反します。
お金の有無で格差広げる
現在の介護保険は、要介護認定を受けた利用者が1〜2割の利用料負担で保険によるサービスを受ける仕組みです。現行制度では、保険サービスと全額自己負担による保険外サービスの両方を利用することも可能です。ただ両者は明確に区分され、同時・一体的に行えないサービスもあります。
保険と保険外の境目が不明確になると利用者・家族が混乱したり、高額な利用料が要求されたりする恐れがあるためなどとされています。保険外サービスを利用・負担しないと保険サービスすら受けられなくなることも懸念されます。
介護保険制度は、もともと営利企業の参入が認められるなど、企業のもうけが優先されかねない仕組みが問題になっています。そんな中、「混合介護」を弾力化させることは、利用者にさらに大きなリスクをもたらしかねません。
公正取引委員会の提言では、「混合介護」の弾力化で、「多様な事業者の新規参入」とか「事業者による創意工夫の発揮」によって、「介護サービスの供給量の増加」「利用者の利便性の向上」の効果があるなどと盛んに宣伝します。具体的に“解禁”を求めているのは、訪問介護で、同居家族への食事提供や訪問介護員に「指名料」を払うなどのケースです。「差額」料金でサービスを自由に設定できる仕組みがひとたびつくられれば、お金が負担できる人は手厚いサービスが受けられ、お金が負担できない人は受けられないという格差が拡大されてしまいます。
いまも介護保険の利用をめぐっては、利用できるサービスであっても費用負担がまかなえず、使いたいサービスですら控えている人が多数です。国民が求めているのは、「差額」を払って利用できるサービスではなく、低額な利用料で安心して使える公的サービスの拡充です。安倍政権は、介護保険の軽度者向けの掃除や調理などの生活援助を保険給付から外す制度改悪をすすめています。公的保険サービスを縮小・廃止しておいて、利用料の全額負担拡大につながる「混合介護」弾力化の推進は、安心・安全な公的介護の仕組みづくりに完全に逆行するものです。
改悪と一体の動き許さず
安倍政権は6月に閣議決定した「日本再興戦略」で、「介護分野での保険外サービス市場を創設・育成」することなど「産業化」の促進を打ち出しています。国の社会保障費削減のために公的給付を削り、それにかわって民間の市場にゆだねることは、社会保障にたいする国の責任放棄にほかなりません。社会保障破壊と一体で公的制度に大穴を開ける「混合介護」拡大は到底認められません。