2016年11月23日(水)
主張
財務省教員削減案
子どもの成長を保障できない
2017年度の予算編成を前に財務省が出した公立小中学校の教職員を今後10年間で4万9千人削減できるとの試算に、批判があがっています。格差と貧困の拡大、いじめや校内暴力の深刻化、外国からの児童生徒の増加、発達障害の子どもの問題など、現在の教職員は多くの課題を抱え、多忙化の中で必死に奮闘しています。精神疾患も増えています。財務省の試算は教職員の劣悪な現状を放置、拡大する内容です。これでは一人ひとりの子どもの成長のための教育を保障することはできません。
「事実誤認」の減員主張
財務省の試算は、「現在の教育環境を継続」させた場合でも、子どもの数が減少するから、10年間で4万9千人の教職員を減らせるというものです。しかしそれは、文部科学省ですら「誤解や事実誤認に基づく記述がある」と指摘し、25ページにわたる反論を発表するほどずさんな内容のものです。
例えば財務省は「平成に入って以降、児童生徒40人当たりの教職員数は約40%増」などとしています。しかし、平成以降に児童生徒に対する教職員の割合が増えたのは、教職員の配置基準が多い特別支援学校・学級に通う子どもが増えたことや、10年前までは計画的に教職員定数を改善する仕組みがあったことによるものです。文科省が反論したように、障害児学校・学級を除く公立小中学校の児童生徒40人当たりの教職員は、最近10年間ではわずか0・04人の増で、ほとんど変わっていません。
この10年間では、発達障害などのために別の教室での指導を受ける「通級指導」の子どもが2・3倍、外国人など日本語指導が必要な子どもが1・5倍になっています。さらに、格差と貧困の拡大などで丁寧な対応の必要な子どもたちが増大しています。にもかかわらず、教職員数の削減が続き、現場の困難は増すばかりです。
財務相の諮問機関である財政制度等審議会は17年度予算編成に向けての「建議」で、「『量』の拡充よりも『質』の向上」などとして、教職員定数増に否定的な考えを示しています。しかしこれも、文科省に「事実誤認」と批判され反論された財務省試算に基づくものです。「事実誤認」をそのままに教職員を減らすなど許されません。
財務省が試算の前提にした教職員定数の水準を、現在のままにするということ自体が、国の教育条件整備の責任を投げ捨てる大問題です。日本の教員1人あたりの子どもの数は経済協力開発機構(OECD)諸国の平均を上回っており、1クラス当たりの子どもの人数もOECD平均を大きく超えています。欧米では小中学校は1クラス20〜30人なのに、日本は35人学級さえいまだに完全実施していません。現在の水準は国際的にみてあまりに低すぎます。
35人学級の完全実施を
子どもの状況の変化を考えても世界の流れをみても、教職員定数を増やすことは最優先課題です。ところが安倍晋三政権は民主党政権時代に国会の全会一致で順次実施することが決められた35人学級をストップしてしまいました。
税金の使い方を変え、文教予算を計画的に引き上げれば、一人ひとりにゆき届いた教育を実現することは十分可能です。国民の共同の運動で教職員定数増、35人学級完全実施を求めていきましょう。