2016年11月21日(月)
主張
40年廃炉原則ほご
約束守らぬ審査が不信募らす
原子力規制委員会が運転開始から40年になる関西電力美浜原発(福井県)の3号機について、20年間の運転延長を認めました。規制委はすでに関西電力高浜原発(同)1、2号機についても20年間の運転延長を認めており、東京電力福島第1原発(福島県)の重大事故後に決められた原発の「40年廃炉」の原則がなし崩しにされています。危険な原発は運転期間が短ければ「安全」というわけではありませんが、法律に明記した「40年廃炉」の原則さえなし崩しでほごにする規制委の審査がまかり通るのでは、原発への不信と不安がさらに高まるのは当然です。
「めったにないこと」が
原発はもともと危険が伴うもので、いったん事故を起こせば制御しきれず取り返しがつかない大きな被害を及ぼすことは、事故から5年半以上たっても収束のめどが立たない福島原発を見れば明らかです。運転期間が短い原発でも大事故を起こす危険があるのに、老朽化すれば放射線を浴びる原子炉の壁がもろくなり、配管なども傷んで事故を起こしやすくなるのはだれも否定できない事実です。
このため福島事故後の法律改定で原発の運転は「原則40年」と明記され、運転開始から40年たった原発は廃炉にすることが原則となりました。「極めて例外」で1回に限り20年まで延長することができますが、規制委の田中俊一委員長は「めったにないこと」と明言してきました。ところがことし6月の高浜原発1、2号機に続き、美浜原発3号機も運転延長が認可されました。二度あることは三度ある―。「40年廃炉」の原則がなし崩しでほごにされるのは重大です。
高浜原発も美浜原発も運転延長にあたって必要な「安全」対策を講じたとしています。しかし、交換することができない原子炉本体の圧力容器がもろくなって、大事故を起こさない保証はなく、老朽化した配管などは全部が交換できないためシートで覆うなど間に合わせの工事をするだけです。それだけでも膨大な費用と期間がかかるため、延長が認められても稼働は数年後になる見込みです。
運転延長の前提になる地震や津波などへの対策は、規制委の基準では不十分で、事故が防げないことが規制委の関係者からも指摘されています。1、2号機の運転延長が認められた高浜原発では、先に3、4号機の再稼働が認められたのに、裁判所の判断で運転が差し止められています。運転延長には、全く道理がありません。
日本原子力発電東海第2原発(茨城県)や関電大飯原発(福井県)1号機、2号機なども運転開始から40年に近づいています。「40年廃炉」原則のなし崩しは、危険を日本中に広げかねません。
原発依存の計画見直しを
運転延長の背景には、原発の運転で利益を確保したい電力業界の思惑とともに、「重要なベースロード電源」として原発依存を続ける安倍政権の姿勢があります。安倍政権のエネルギー計画は、2030年度になっても電源全体の22〜20%を原発に依存する計画で、そのためには老朽炉の運転延長だけでなく、建て替え(リプレース)や新増設も不可欠というものです。
運転期間を延長した老朽炉はもちろん原発の再稼働を許さず、「原発ゼロ」に踏み出すことが、国民の安全のためにいよいよ重要です。