2016年11月20日(日)
第27回党大会決議案の用語解説〈上〉
第1章
「社公合意」
社会党と公明党とのあいだで、1980年1月にとりきめた「連合政権についての合意」のこと。この「合意」の最大の特徴は、自民党批判は明記せず、「日本共産党は、この政権協議の対象にしない」ことを明記し、日本共産党排除だけを明確にしたことでした。これ以降、国政の場や全国的な規模での日本共産党と社会党との共闘は行われなくなり、「日本共産党を除く」形で国会運営が行われるようになりました。地方での革新統一の努力にもとづく革新自治体も、次々とくつがえされ、多くの自治体で日本共産党以外の党派による「オール与党」体制がつくられました。
「自民か、非自民か」というキャンペーン
1990年代初め、自民党政治の危機が深まるもとで、自民党の一部勢力と日本共産党を除く野党、保守新党による「非自民」連合が生まれました。政治の中身は自民党政治を「継承」し、担い手だけを変えようというものです。支配勢力は、マスコミを総動員して「非自民」勢力をもちあげ、日本共産党を締め出す「自民か、非自民か」のキャンペーンをくりひろげ、1993年には、「非自民」諸党による細川護熙連立政権が誕生。小選挙区制と政党助成金制度を成立させるなど自民党以上の反動ぶりをあらわにし、首相が金権腐敗で退陣するなど、「非自民」連合は数年で崩壊しました。
「二大政党による政権選択」というキャンペーン
1990年代後半の国政選挙での日本共産党の連続的な躍進に、体制的な危機感をつのらせた支配勢力が、日本共産党を日本の政治から締め出すことを目的にくわだてた大がかりな作戦です。2003年に財界主導で本格的に開始された「自民か、民主か」という「二大政党による政権選択」の大キャンペーンは、日本共産党を有権者の選択肢の外に追いやる「最強・最悪」の反共作戦であり、この反共作戦による逆風によって、わが党は国政選挙で繰り返しの悔しい後退・停滞を余儀なくされました。
所得の再配分機能
政府が、税制や社会保障制度を通じて、高所得者から低所得者へ所得の再配分をする機能です。資本主義の市場経済では、働いてつくり出す価値が、企業の利潤や賃金、利子・地代などの形で配分されていますが、放っておけば貧富の格差が拡大します。その格差を是正するため政府が、所得の多い個人や企業により高い割合で税負担を求める累進的な課税制度によって財源を確保する一方、教育、保健、医療、保育、福祉、年金などでの予算の支出、社会保障の給付を通じて、所得の少ない人の生活を支える機能を持っています。
「原発利益共同体」
原発利権に群がる財界、政界、官僚に一部のメディアや学者も加わった利権集団のこと。その中心は、原発でもうけている電力会社、原発メーカー、鉄鋼業界、大銀行、大手ゼネコン、セメント業界など財界の中枢を構成する大企業です。この勢力は、原発推進の政党・政治家に政治献金を配り、特権官僚とも癒着して、政治・行政をゆがめ、原発の早期再稼働を執拗(しつよう)に求めてきました。安倍政権が進める原発再稼働は、「原発利益共同体」の利潤追求のために国民の安全をないがしろにするものであり、国民世論との矛盾を広げています。
第2章
P5・核保有5大国
「P5」は、国連安全保障理事会の常任(Permanent)理事国5カ国。NPT(核不拡散条約)はこの5大国だけに当面の核兵器保有を認める一方、核兵器国に核軍縮・廃絶の取り組みを義務付けています。しかし5大国はいま、他の大量破壊兵器(化学・生物兵器)と同じように核兵器を禁止する条約の国際交渉の開始を妨害。「P5プロセス」として定期的に会合も開き安全保障のために核兵器は必要≠ニいう「核抑止力」論から、段階的(ステップ・バイ・ステップ)アプローチこそ唯一の核軍縮の道≠ネどと核廃絶を究極の目標に追いやる主張をし、「核兵器のない世界」をめざす具体的な動きに敵対しています。
「国連憲章にもとづく平和の国際秩序」
1945年に創設された国際連合は、悲惨な二つの世界大戦をふまえ、平和な国際秩序の建設を世界的な目標として提起しました。国連憲章は、武力の行使や威嚇(いかく)の原則禁止、紛争の平和解決をはじめ世界の平和のルールを定めています。戦後、米ソなどにより侵略戦争が繰り返されましたが、国連憲章のルールに基づき結成された東南アジア諸国連合(ASEAN)や中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)など軍事同盟にかわる平和の地域共同体が、いま大きく発展しています。それは「世界に平和秩序をつくりあげる、平和の発信源」(大会決議案)となっています。
多国籍大企業の利益を最優先するグローバル資本主義
1990年代に入り経済のグローバル化が加速する中で、世界的に活動する多国籍大企業は、規制や課税がもっとも低い国や地域に会社や工場を移すことを進めました。このため、関税の撤廃、法人税や社会保障負担の軽減、賃金や労働時間など労働条件の切り下げ、環境基準の緩和など、各国には国民の雇用と暮らしを守る制度や規制の引き下げ競争が押し付けられました。多国籍大企業が逃げ出した地域は、大量失業、医療・福祉など社会制度の崩壊につながるような影響を被っています。TPP(環太平洋連携協定)などさまざまな「自由貿易」協定は、そのルールづくりに利用されています。
「南シナ海行動宣言」(DOC)
南シナ海での領有権をめぐる紛争を激化させないために、ASEAN諸国と中国が2002年に署名しました。国連憲章や国際法の原則に従って、領土紛争を平和的に解決することを定め、「現在無人の島嶼(とうしょ)、岩礁、浅瀬、洲(す)その他のものへの居住を慎み、関係国間の相違に建設的態度で対処することなどを含め、紛争を複雑化あるいは激化させ、また平和と安定に影響を与えるような行動を自制することを約束する」(第5項)と明記しています。DOCを法的拘束力のある「行動規範」(COC)に発展させることがめざされています。
常設仲裁裁判所
国際紛争を国際的な仲裁で平和的に解決する制度を強めようと、1899年、オランダのハーグで開かれた第1回「ハーグ平和会議」で設立された国際司法機関(本部はハーグ)で、121カ国が加盟。仲裁裁判所は領有権の審理はしませんが、フィリピンは2013年、中国による南シナ海での埋め立てや人工島造成などが、国連海洋法条約に反しているとして、同条約の規定に基づき訴えていました。同裁判所への提訴は相手国(この場合は中国)の同意なしでも可能。国連海洋法による今回の裁定(判決)は、最終的なもので、紛争当事国を法的に拘束するため、当事国は判決に従う必要があります。
国連海洋法条約
「海の憲法」とも呼ばれる多国間条約で1994年に発効。現在の締約国は160カ国余り。領海や排他的経済水域(EEZ)、深海底などの海域分類や国家の権限、海洋環境の保全や紛争解決の手続きなどを規定しています。主要国では米国が未批准。複数の国の領有権主張が対立している南シナ海については、中国がほぼ全域を囲む「九段線」内に排他的な「主権的権利と管轄権」があると主張していますが、常設仲裁裁判所は、中国の主張を、国際法上「根拠がない」と退けました。ASEAN諸国は、同条約など国際法に基づく南シナ海問題の平和的解決を追求しています。
友好関係原則宣言
植民地体制の崩壊を背景に、国連憲章の定める諸原則を発展させるため、国連総会が1970年に全会一致で採択した宣言。武力不行使、紛争の平和的解決、国内問題不干渉、相互協力、人民の同権と自決、主権平等、国際義務の誠実履行という、国家間の友好・協力のための七つの基本原則をより具体的に定め、国連憲章に準ずる国際規範とみなされています。紛争の平和的解決の原則では、「事態の悪化をもたらすおそれのあるいかなる行為も慎まなければならない」と規定しています。
非同盟諸国首脳会議
大国主導の軍事同盟に加わらず、世界平和、民族自決、公正な世界秩序、核兵器廃絶の実現などを目指す非同盟運動に参加する諸国で構成。1961年のベオグラード(旧ユーゴスラビア)での第1回首脳会議以来、ほぼ3年ごとに首脳会議を開催し、世界情勢や活動方針に関する「最終文書」を採択しています。加盟国は現在、120カ国(パレスチナを含む)で、会議参加はできるが議決権のないオブザーバー国(中国・ブラジル・メキシコなど)の17カ国を加えると、その人口は世界全体の77%を占めます。日本共産党は、日米安保条約廃棄後に日本が非同盟諸国会議に参加することを展望しています。
新しい大国主義・覇権主義
1960年代に中国共産党の毛沢東派は、日本を含む各国の共産党の内部に自分たちに従う分派集団を組織し、その国の党と運動を支配下に置こうとしました。この覇権主義、干渉主義の横暴は、各国の運動に否定的な影響を与えましたが、自主独立を掲げる日本共産党をはじめ強い反対にあう中で、失敗に終わりました。中国は当時の行動に反省を示しましたが、最近の同国の外交と行動には、自国の主張や利益を押し付けるなど重大な問題が現れています。大会決議案は四つの点をあげ、それらを「新しい大国主義・覇権主義の誤り」と指摘し、真剣な是正を求めました。
平和5原則
主権と領土保全の相互尊重▽相互の不可侵▽相互の内政不干渉▽平等互恵▽平和共存からなる原則。1954年4月、チベットに関する中国とインドの協定で、友好関係の基礎として確認。同年6月、中国の周恩来首相がインドを訪問し、ネール首相と発表した共同声明で、両国関係にとどまらず、他の国との関係や一般の国際関係のなかにも適用されるべき原則とうたわれました。平和5原則は翌55年、バンドン平和10原則へと発展しました。
バンドン平和10原則(1955年)
1955年4月にインドネシアのバンドンで29カ国が参加して開かれたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)の「世界平和と協力の増進にかんする宣言」にある原則。@基本的人権と国連憲章の尊重A国家主権、領土保全の尊重B人種、諸国家の平等C内政不干渉D国連憲章に従い諸国民が個別的、集団的に自国を防衛する権利の尊重E集団的防衛機構を大国の特定の利益に用いず、他国に圧力をかけないF領土保全、政治的独立への侵略、脅迫、力の行使をしないG国際紛争は国連憲章に従い、平和的手段で解決H共通の利益と協力の増進I正義と国際的義務の尊重――を明記。この精神は非同盟運動に引き継がれました。
日中両党で確認してきた原則
日本共産党と中国共産党は1998年6月、32年間断絶していた両党の関係を正常化する合意書を交わしました。合意は、日本共産党との関係で中国側が過去に「内部問題相互不干渉の原則にあいいれないやり方をとったことについて真剣な総括と是正をおこなった」と明記し、中国側の干渉という誤りに関係断絶の原因があったとの認識で一致。そのうえで両党の交流や協力を律する原則として「日本側が主張する自主独立、対等平等、内部問題相互不干渉の三原則および中国側が主張する独立自主、完全平等、相互尊重、内部問題相互不干渉の四原則」を確認しました。
スターリン時代の覇権主義
ロシア革命の指導者レーニンは、ロシア帝国が併合していたバルト3国の独立を認めるなど、民族自決権の実現を推し進めました。しかし、レーニンが死去した後に指導者となったスターリンは、1939年にドイツのヒトラーと欧州を分け取りする密約(独ソ不可侵条約の付属議定書)を結び、それに基づきバルト3国やポーランド東部を併合。第2次大戦末期には、自ら同意していた戦後処理の原則「領土不拡大」の原則に反して、日本の歴史的領土である千島列島、北海道の一部である歯舞・色丹を占領し自国領とするなど、他国支配の覇権主義の行動を繰り返しました。
異なる文明間の対話と共存
それぞれの文明には、独自の社会発展の論理があり、同時に、平和や公正といった共通する普遍的な価値観もあります。そうした違いと共通点を理解するための対話と、相互尊重して共存することは、世界の平和のために不可欠です。国連も、「文明や文化の衝突ではなく対話を」とのイランの呼びかけを契機に、2001年を「国連文明間の対話年」と定めました。日本共産党はこの立場を、新しい日本外交の基本の一つとするよう党綱領で提起しています。国際テロを特定の宗教や文明と結び付け、対立をあおることは、「対話と共存」という世界の流れに逆行し、テロ根絶にも極めて有害です。
NPT(核不拡散条約)再検討会議
NPT(1970年発効、191カ国・地域)の履行を点検するため5年ごとに開かれます。同条約は、1967年以前に核兵器を獲得した米ロ中英仏の5カ国以外は核保有を認めず、他国への「拡散」の禁止、原子力の平和利用などを定めた不平等条約ですが、核兵器国には廃絶への努力を義務付けています(第6条)。このため、同会議は、非保有国などが核兵器国に軍縮や廃絶を要求する国際舞台ともなってきました。2015年会議は、核大国などの抵抗で最終文書は採択できませんでしたが、期限を切った核廃絶の法的枠組みも議論されました。