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2016年11月20日(日)

主張

財政審の建議

容赦ない負担増で生活壊すな

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 財務相の諮問機関である財政制度等審議会(財政審)が2017年度予算編成に向けて、歳出削減を求める「建議」をまとめました。最大の標的は社会保障費で、医療や介護などの負担増・給付削減を次々と迫るものになっています。すでに国民の生活実態は、4年近い安倍晋三政権下の社会保障削減路線により深刻さを増しています。医療や介護でこれ以上の負担を強いられることになれば、それこそ暮らしは行き詰まります。「財政健全化」といって社会保障費の圧縮・削減ばかり推進する安倍政権のやり方は、あまりに異常です。

1400億円削減強引に

 安倍政権は昨年閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」で、社会保障費の「自然増」を3年間で1兆5000億円(毎年5000億円)規模に抑え込む方針を明記し、16年度には診療報酬のマイナス改定をするなど削減・圧縮を実行しています。

 社会保障の自然増は、高齢化の進展や技術の進歩などに伴うものです。それを無理やり一律カットすることは、医療、介護、生活保護、年金など社会保障のあらゆる分野で深刻な矛盾やひずみ、機能不全を引き起こし、国民的批判を浴びています。

 しかし、安倍政権はそのことへの反省はありません。17年度の予算編成では、年間1兆〜8000億円程度とされる社会保障費の自然増を厚生労働省が6400億円に圧縮して概算要求したのにたいし、財務省などはそれをさらに1400億円削り5000億円にすることを要求、予算編成の大きな焦点の一つとなっています。

 今回の財政審建議は、社会保障削減への強硬ぶりをいっそう露骨に示しています。建議の本文約80ページのうち20ページを社会保障についての記述に割き“手綱を緩めるな”“改革を集中的に進める機会と捉えよ”“先送りでなく前倒しを”と一歩も譲らぬ姿勢です。

 いつでも誰でも必要なときに低額で医療にかかれる「国民皆保険」の仕組みにも「コストを明確に認識しないまま、自由に医療機関にかかりやすく」「過剰なサービス提供が行われやすい」などとケチをつけています。建議が列挙した項目も、75歳以上の後期高齢者医療制度の保険料軽減の「速やかな廃止」、高額医療費負担限度額の引き上げ、公的介護サービスの縮減など高齢者をはじめ国民の暮らしを直撃するものがほとんどです。

 一連の削減策は社会保障制度の「持続可能性」のためなどといいますが、肝心の国民生活はとても「持続」できません。「財政健全化」を口実に、負担増や削減を実行しても、患者や被介護者の重症化・重度化を招けば、社会保障費をむしろ増大させます。「削減ありき」の暴走はかえって国の財政も危うくしかねません。

失政のツケ回し許されぬ

 建議では消費税増税が延期されたから社会保障削減を加速せよといわんばかりですが、それこそ消費税増税頼みの経済財政運営の「失政」のツケ回しです。「財政健全化」で緊縮政策を国民に押し付けることは、格差と貧困をますます広げる結果にしかなりません。

 大もうけする大企業や大資産家に応分の負担を求めるなど税の集め方、使い方を根本的にあらため、国民の暮らしを支える経済財政に転換することが急がれます。


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