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2016年11月19日(土)

きょうの潮流

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 “秋風吹けば納戸の裸電球で空元気”。河岸では暗号めいた商売用語が飛び交います。納戸の裸電球は無駄に明るいこと。つまりこのセリフは景気の悪さを示しているのだと▼長年、築地市場で働いた冨岡一成さんの著書『築地の記憶』に教わりました。人間くさく、それでいてさっぱり、余計なことを考えずに仕事に集中できる。ひとつの意思で動く巨大な生き物のような河岸には居心地の良さと懐の深さがあったといいます▼80年余の歴史をもつ築地市場は日本の食文化の集積地。四季折々の食材を扱うプロの職人や料理人たちは独特の文化を育んできました。知の集積でもある舞台はドキュメンタリー映画にも▼国内外の一般客でごった返す場外市場の一角にきょう「築地魚河岸」が開業します。豊洲市場に移転しても築地がにぎわいを保てるようにと新たにつくった商業施設です。しかし、移転時期のめどが立たないままのスタートになりました▼小池都知事が豊洲移転について、早ければ来年の冬になると公表しました。知事自身、いまだに安全性さえ検証されていないことを認めています。延期に伴う損失額は月4億円超との試算も。関係者は「いけすの鯉(こい)」状態だと悲鳴を上げています。にもかかわらず、なぜ豊洲にこだわるのか▼売り手と買い手が実際に取引する市場には、人と人とのふれあい、食べ物を扱う繊細さがあります。それには安心・安全があってこそ。そのまなざしを忘れては世界に誇る文化も失うことになるでしょう。


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