2016年11月16日(水)
「部落差別」永久化法案は 廃案しかない
浮上した重大な問題点
自民、公明、民進3党が共同提出した「部落差別」永久化法案(「部落差別解消推進法案」)が16日にも衆院法務委員会で採決されようとしています。法案は、「部落差別の解消」とは逆に、部落差別の固定化・永久化につながる危険性が、国会審議で明らかになっています。
法案は「解同綱領」そのもの
法案は、「部落差別の解消」のため、国と地方自治体に「差別の実態調査」を義務づけ、教育、啓発などの「施策」を行うよう定めるものです。ところが、何をもって「部落差別」というのか、法案には何の定義もありません。
法案提出者は、法案に定義はなくとも、「部落差別」とは「部落の出身者であることによる差別」ということで「行政においても一義的に明確に理解できるものだ」(自民・宮崎政久議員、10月28日衆院法務委員会)と答弁しました。
「部落差別を定義した法律は存在しない」と、法務省や総務省などの行政当局も答弁しているのに、どうして、行政が「部落差別」を「一義的に理解」できるのか。日本共産党の藤野保史議員は、「部落解放同盟綱領」(2011年決定)を示し追及しました。
同綱領は、「被差別部落」に「現在居住しているかあるいは過去に居住していたという事実などによって、部落差別をうける」と規定。提案者のいう「部落出身者に対する差別」という定義は、部落解放同盟(解同)の主張とまったく同じです。法案は、解同綱領を法律に盛り込むものにほかなりません。
「部落差別解消」の歴史に逆行
そもそも部落問題とは、封建的身分制に起因します。戦後、基本的人権と民主主義の憲法のもとで問題の根源である貧困の解決と国民融合をめざす取り組みが進められました。1969年以降の同和対策事業等により環境改善などが図られ、02年3月、政府は、これ以上の特別対策を行うことは「問題の解決に有効とはいえない」として対策事業を終結させました。
関係者の粘り強い取り組みで、「基本的には社会問題としての部落問題は解決したといえる状態に到達」(全国地域人権運動総連合・新井直樹事務局長)しています。
問題は、一部の自治体等で「部落民以外は差別者」と主張する解同と特別の関係を続け、教育・啓発を中心に「同和特別措置」を継続していることです。
法案がやろうとしている「部落差別の実態調査」は、旧対象地区を掘り起こし、対象住民を洗い出すことになります。これは許し難い人権侵害です。そのうえ、国民を差別意識の持ち主ときめつけ、内心の自由を侵す「部落」問題の「啓発」を恒久的に行うことになります。
かつて行政が主体性を失って、「窓口一本化」と不公正・乱脈な同和行政が横行した時代へ逆戻りする重大な内容です。
「部落差別」の「現状を見誤る」
法案提出者は「部落地名総鑑をインターネット上で販売しようという動き」をあげ「部落差別の変化」を強調します。
しかし、自民党の友誼(ゆうぎ)団体「自由同和会」は、部落地名総鑑を発見しても、「差別の助長になると大騒ぎする」ことはないとのべ、「いまだに差別があることの根拠にすることは差別の現状を見誤る危険な所業といわざるを得ない」と指摘。「部落民」「部落差別」を強調する解同綱領を「単に運動側の都合だけ」で融合を妨げるものだと厳しく批判しています。(11年度運動方針)
全国地域人権運動総連合には、「この法案は未来永劫(えいごう)、私たちとその子孫に部落の烙印(らくいん)を押すことになります」「いつまで私たちを部落に縛りつけるのですか」と切実な声が寄せられています。
「部落差別」永久化法案は、廃案しかありません。
(白髭寿一・党国会議員団事務局)