2016年11月16日(水)
主張
南スーダン派兵
国民欺く説明で新任務許せぬ
安倍晋三政権は15日、南スーダンPKO(国連平和維持活動)に20日から派兵を始める自衛隊部隊(第11次隊)に対し、戦争法(安保法制)に基づく「駆け付け警護」の新任務を付与することを閣議決定しました。政府は、「駆け付け警護」について、南スーダンに滞在する日本人を守るためとか、他国軍の兵士を対象にすることは想定されないなどと、その「必要性」や「安全性」を強調しています。しかし、南スーダンの情勢や政府の説明に照らしても、「駆け付け警護」によって自衛隊員が「殺し、殺される」事態に巻き込まれる危険は明らかです。
「安全性」に根拠なく
政府は、南スーダンに派兵する自衛隊部隊に「駆け付け警護」の新任務を付与する「必要性」について、首都ジュバには現在、約20人の日本人が滞在しており、「邦人の安全に資する」と強調しています。あたかも警護対象は日本人のみだと思わせる説明です。
しかし、戦争法の一環である改定PKO法は、「駆け付け警護」について、「国連平和維持活動」や「人道的な国際救援活動」などを行う「活動関係者」を保護することと明記し、そのための武器の使用を認めています。PKO部隊の他国軍兵士やNGO関係者などが襲撃された際、自衛隊が武器を持って現場に駆け付け、救助するというのが「駆け付け警護」のそもそもの任務であり、警護対象は日本人だけに限られません。
実際、安倍政権が閣議決定した「実施計画」では、南スーダンPKOでの自衛隊の任務に「駆け付け警護」を追加しただけで、日本人のみを警護するなどという限定はどこにも書かれていません。
政府は、PKO部隊(国連南スーダン派遣団=UNMISS)の他国軍兵士に対し、自衛隊が「駆け付け警護」を行うことは「想定されない」と説明し、「安全性」を強調しています。他国軍兵士を保護するのは、基本的に南スーダン政府軍とUNMISSの歩兵部隊だからだというのが理由です。
しかし、「実施計画」には自衛隊の「駆け付け警護」の対象に他国軍兵士を含まないという記述は一切ありません。しかも、南スーダン政府軍は、UNMISS兵士への襲撃など敵対行為が多数報告されています。UNMISSの歩兵部隊だけで対応できない場面も当然想定され、自衛隊に「駆け付け警護」が要請される可能性は十分あり得ます。ごまかしの説明で新任務を付与することは決して許されません。
南スーダンでは、内戦状態の悪化、UNMISS部隊への事実上の先制攻撃の権限付与によって、停戦合意や中立性など自衛隊の「PKO参加5原則」は既に崩壊しています。
自衛隊は直ちに撤退を
自衛隊が駐留するジュバでは、7月に大統領派(政府軍)と副大統領(当時)派武装勢力との大規模な戦闘が発生し、数百人が死亡しました。政府は停戦合意の崩壊などをかたくなに認めようとしませんが、「実施計画」では自衛隊が「有意義な活動を実施することが困難と認められる場合」の「撤収」を初めて規定し、内戦状態の深刻化を事実上認めています。
「駆け付け警護」の新任務付与は論外であり、自衛隊は南スーダンから直ちに撤退すべきです。