2016年11月15日(火)
南スーダンPKO 新任務付与
与党内からも慎重論
安倍政権が南スーダンでの国連PKO(平和維持活動)に参加する自衛隊部隊に対する「駆け付け警護」などの危険な新任務付与の閣議決定を15日にも強行する構えを見せるなか、与党内でも慎重論が出されています。
自民党は11日の党総務会で、戦争法にもとづく新任務の「実施計画」案を審査。当初11日に予定されていた閣議決定を15日に先送りしました。閣議決定前の党内審査について関係者によると、「重要案件であり、党内にも慎重論があるため、総務会の議題にした」といいます。
総務会メンバーの一人は、「一歩間違えればとんでもないことになる。慎重にするのは当然だ」と厳しい表情を見せます。
「政権吹っ飛ぶ」
閣僚経験者の一人は、「稲田防衛相が“(現地情勢は)安定している”“(自衛隊員の)安全は確保する”と繰り返すが、(南スーダンでは)大統領と元副大統領が敵対して事実上、内戦状態だ。戦死者が出ればもちろん、けが人が出ただけで大変なことになる。稲田防衛相が辞めれば済むという問題ではない。政権が吹っ飛ぶ」と懸念を示します。
自民党内からは、「現地はかなりやばい状況だ。防衛省の中には『南スーダンから撤退すべきだ』という意見は実はけっこう多い。外務省が前のめり。自民党としても撤退の決断をすべきだ」という意見も出ています。
戦闘現場で負傷する事態も想定され、“隊員を治療する「衛生兵」の割合や技能が、米軍に比べ自衛隊では格段に劣っていることから、負傷者が出たとき、有効な対応ができるのか”という現実的な疑問も出ています。
必ず犠牲者が…
政府や自衛隊との関係を持つ安全保障シンクタンクの研究者の一人は、閣議決定後の南スーダン派兵について「現状では必ず犠牲者が出る。日本の防衛に関係がなく、国益にどれだけ関係するのかもわからない。政治的にも大変なリスクだ。実際には、『駆け付け警護』などできず、隊員は生き延びることで精いっぱいになる」と指摘します。
閣議決定に付される予定の「実施計画」案には停戦合意などの、PKO参加5原則が満たされる場合でも、「安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難」な場合は自衛隊部隊を「撤収する」と明記するものの、これに法的な拘束力はありません。
「武力行使」の概念に多くの法的限定をつけ、現在の南スーダンには「法的な意味での武力行使」がないと強弁して、危険な活動の実績、既成事実の積み上げをはかる狙いです。(中祖寅一)