2016年11月7日(月)
NHK日曜討論
小池書記局長の発言
日本共産党の小池晃書記局長は6日放送のNHK「日曜討論」で、自民、公明、維新3党が4日の衆院特別委員会で強行採決した環太平洋連携協定(TPP)承認案・関連法案をはじめ、臨時国会の焦点テーマについて与野党幹事長らと議論しました。
TPP
強行採決とんでもない――徹底審議で廃案に
司会者の太田真嗣氏がTPPについて「採決に踏み切った理由」を聞くと、自民・下村博文幹事長代行は山本有二農水相の「強行採決」暴言について陳謝した上で、「十分な審議はされた」「山本大臣の問題とは別に、TPPはTPPで対応する必要がある」と発言しました。
これに対して小池氏は「所管大臣の度重なる暴言は、反省やおわびでは済まない」と批判し、大島理森衆院議長の「決して平穏な状況のもとで採決が行われたわけではない」との発言にもふれ、「議長のこうした発言は異例のこと。与党は重く受け止めるべきだ」と指摘しました。「事の発端は農水相の相次ぐ暴言であり、野党4党は辞任を求めている。ところがゼロ回答だ。この事態を打開する責任は与党側にある」と山本農水相の辞任を求めました。その上で、衆院TPP特別委の与野党理事が合意した中央公聴会やテーマ別集中審議も行われていないとして、慎重審議を行うべきだと主張しました。
民進・福山哲郎幹事長代理は、食の安全の問題など「国会審議が進むにつれていろんな不安が大きくなっている。不安について国会で答えていない」として、さらなる審議を要求。社民・吉川元政審会長も「議論が尽くされたとは到底思えない」と述べました。
下村氏は「自民党として(山本農水相を)辞任させるつもりはない」と拒み、TPPの衆院本会議での通過を狙う考えを表明。さらに司会者からTPP承認のために今国会会期(30日まで)を延長させる意向があるのかを問われ、「まだこれからのことだ」と会期延長を否定しませんでした。
小池氏は「強行採決の上に会期延長なんてとんでもない」と批判。関税撤廃や「非関税障壁」の撤廃、投資家対国家紛争解決(ISDS)条項などTPP問題の議論が始まったばかりであり、「議論が進むにつれて批判や疑問が広がっている。共同通信の世論調査でも66・5%が慎重審議を求めており、徹底的な審議を行い、廃案にすべきだ」と求めました。
公明・斉藤鉄夫幹事長代行は、米大統領選候補がTPP「反対」を表明していることについて、「(新大統領になったときに)交渉のやり直しなど認めない。そのためにも早い批准が必要だ」と前のめりの姿勢を示しました。
小池氏は、「北大西洋版TPP」とされる環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)に対して欧州諸国で反対が広がっていることや、経済学者のスティグリッツ氏の言葉を紹介し、「世界では『多国籍企業を保護するようなルールづくりでいいのか』という流れになっている。それをきちんと見るべきだ」と指摘しました。
「年金カット法案」
これでは生きていけない――最低保障年金の創設を
テーマは、TPPにとどまらず与党と維新が4日の衆院厚生労働委員会で質疑を強行した「年金カット法案」に移りました。
小池氏は、これまでの自民党政権でも賃金がマイナスになったときには年金までマイナスにはせず、年金額を据え置いてきたものの、「今回の法案は、物価がいくら上がっても“賃金が下がったら年金を下げる”というものだ。例えば消費税が増税されて物価が上がっても、“実質賃金が下がったら年金を下げる”という。これでは生きていけない」と指摘。「いま『年金が下がりますよ』というメッセージを出すことほど、経済政策としても愚かなことはない」と批判しました。
そして、年金の減額は地域経済に大打撃となり、現役世代の暮らしや雇用にも深刻な打撃を与えるとし、最低保障年金制度の創設など抜本的な改革が必要だと主張しました。
同法案に対し、民進・福山氏は「審議というか、制度を作り直したほうがいい」と見直しを求め、自由・玉城デニー幹事長は「最低保障年金の確立」などを求めました。
憲法審査会
必要なことは憲法を生かすこと――改憲発議の場を動かす必要はない
憲法改定の問題では、自民・下村氏が「発議に向けた(改憲項目の)絞り込みの議論も、これから憲法審査会で議論するべき時期にそろそろ来ているのではないか」と発言しました。
小池氏は、現行憲法にある9条の恒久平和主義や生存権、教育を受ける権利、幸福追求権をはじめ、30条にわたる人権規定は非常に先駆的だと述べ、「いまの日本の政治にとって必要なのは、憲法を変えることではなく、憲法がめざす政治を実現し、憲法の先駆的な値打ちが全面的に生きる日本をつくることだ。これが私たちの対案だ」と表明。「憲法審査会は一般的に憲法を議論する場ではない。下村氏は発議に向けた絞り込みをやりたいと言った。(審査会を)動かす必要はさらさらない」と語りました。
その上で、「自民党改憲案」について、戦力不保持を定めた9条2項を削除して「国防軍」を創設、何の制約もなく武力行使ができるようにすることや、憲法停止状態をつくる「緊急事態条項」、基本的人権は「侵すことのできない永久の権利」とした97条の削除といった危険な中身を示し、「こんな時代逆行の『自民党改憲案』を出したまま、発議の場である憲法審査会を動かすことは、到底認めるわけにいかない」と強調しました。
これに対し自民・下村氏は「民主主義を主張している共産党とは思えない発言だ」と述べ、「各党がそれぞれの憲法草案を持つのは当然。しかし憲法審査会でそれを議論することは別の話だ」とごまかしました。
小池氏は、下村氏の発言について「わが党が民主主義を理解していないかのような発言があった。厳しく抗議したい」と表明し、安倍晋三首相自身が「いかにわが党案(自民党改憲案)をベースにしながら(改憲発議に必要な)3分の2を構築してゆくか」と述べているとして、「だから私は指摘している。憲法の問題は本当に重大問題だ」と語りました。
さらに、小池氏は、南スーダンPKO(国連平和維持活動)における自衛隊の武器使用の拡大について、同国が「内戦状態」にあるとして、「自衛隊員が『殺し殺される』危険にさらされることを許していいのか。『PKO5原則』の停戦合意も崩壊しており、撤退すべきだ。そういう議論を国会でも徹底的にやるべきだ」と求めました。