2016年11月7日(月)
南スーダンPKO 撤退相次ぎ組織的危機
安倍政権は任務拡大狙うが…
「武力介入」の限界示す
安倍政権は安保法制=戦争法に基づき、南スーダンPKO(国連平和維持活動)=国連南スーダン派遣団(UNMISS(アンミス))に参加している陸上自衛隊に、「駆け付け警護」などの武器使用任務を拡大しようと狙っています。しかし、UNMISSは、参加国の撤退が相次ぎ、組織的な危機に直面しています。
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ケニア政府は3日、UNMISSからの即時撤退を命じました。同国は約1230人を派遣しており、UNMISS総人員約1万3000人のうち、1割近くを占めていました。南スーダンに追加派遣される「地域防護部隊」への参加も見送る方針です。
その理由は、潘基文(パン ギムン)国連事務総長がUNMISSのオンディエキ司令官(ケニア人)を解任したことへの反発です。今年7月に首都ジュバで発生した政府軍と反政府勢力との戦闘のなか、政府軍の攻撃で多くの住民が死傷し、海外の援助関係者がレイプなどの被害に遭ったにもかかわらず、UNMISSの歩兵は動きませんでした。このため、国連は1日公表の報告書で「文民保護に失敗した」と断定。司令官だったオンディエキ氏はその責任を追及されたとみられます。
これに先立ち、文民警察を派遣していた英国、ドイツ、スウェーデン、ヨルダンなども、7月の戦闘を契機に「安全確保」などの理由で文民警官を国外退避させました。
日本政府は10月25日に公表した南スーダン派兵に関する「基本的な考え方」で、「7月の衝突事案の後も、部隊を撤退させた国はない」と述べていますが、この説明は破たんしました。
PKOは従来、内政不干渉・中立性を原則としており、主要任務は停戦監視でした。しかし、1990年代後半から、「文民保護」のためには武力行使も辞さない、国連自体が「交戦主体」になる方向にかじを切りました。2011年7月の南スーダン独立に伴って創設されたUNMISSの筆頭任務も「文民保護」であり、武力行使も排除していません。
現状の南スーダンでは政府軍がPKOに対する直接的な攻撃者になっています。任務遂行のためには政府軍との交戦が避けられない―。こうした状況のなか、PKO参加国は武力行使を躊躇(ちゅうちょ)せざるをえないのが現実です。