2016年11月6日(日)
きょうの潮流
ドラマファンの間で評判だったNHKの「夏目漱石の妻」。文豪と妻・鏡子の心の取っ組み合いが激しくも、いとおしさを込めて描かれました。日露戦争や労働運動など、明治という時代の流れも織り交ぜながら▼改めて思うのは、NHKの番組制作の層の厚さです。少し前、あるプロデューサーが公共放送の役割について「視聴率にとらわれることなく、バラエティーやドラマでも政治や社会問題をテーマにすえ、提起していくことがある」と語っていました▼籾井勝人会長が「政府が右と言うものを左とは言えない」と述べたのは、2年前の就任会見でした。以後、安倍政権寄りのニュース報道が目立ち、制作現場の萎縮も伝えられます▼しかし、あきらめない職員が存在するのも事実です。「企画を通すのは大変だが、手も足も出ないわけではない」「自分の信じる道を進みたい」と懸命な努力が続けられています▼政権の意に添った放送をするのは、今に始まったことではありません。権力に従うか、逆に権力が間違えば厳しく批判するか。番組制作者や記者から執行部に至るまで、NHKの放送の歴史は二つの立場のせめぎあいでもありました▼さて籾井会長の任期は来年1月。経営委員会は次期会長選考へ。あきれたことに籾井氏も候補の1人としています。市民団体による「籾井氏の再任反対」署名は3万人を超えました。学者、児童文学作家ら有識者も「権力から独立した公共放送にふさわしい」会長選任をと強い声をあげています。