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2016年11月4日(金)

主張

医療・介護の改悪案

削減ありきで暮らしを壊すな

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 安倍晋三政権のすすめる医療と介護の制度改変について、厚生労働省の審議会での議論が年内とりまとめに向け、大詰めを迎えています。結論が出れば来年の通常国会に関連法案を提出するほか、来年度から実施するものもあります。負担増や保険給付制限などが次々提案される中、国民の批判で見送った案もありますが、暮らしに影響を与える多くの改悪を行う基本は変えていません。負担増などが実施されれば経済的事情で医療や介護を受けられない事態を深刻化させます。医療、介護、年金など社会保障大改悪を阻むたたかいを広げることが急務です。

「工程表」の危険まざまざ

 厚労省の社会保障審議会の部会では、医療・介護の利用者負担のあり方、保険給付の範囲の制限などについて多岐にわたる項目が提案され、具体化がすすんでいます。

 介護保険で要介護1、同2の「軽度者」むけ生活援助サービスを保険給付から外すなどの案は、国民の批判の広がりで今回は見送るなどとしました。しかし厚労省は代わりに新たな利用抑制案などを持ち出した上、他の多くの改悪案はあくまで実施する構えを崩しておらず、負担増と給付減を押し付けるやり方自体を改める姿勢はありません。

 国民への負担増と給付削減の強化を通じて社会保障費を削減・抑制するという安倍政権の確固とした方針が根本にあるからです。安倍内閣は2015年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」で、16年度から3年で社会保障費の「自然増」を1兆5000億円程度に抑え込むことを盛り込みました。高齢化や技術進歩などによる自然増は年1兆〜8000億円程度といわれます。それを機械的に5000億円に抑制するのは、乱暴極まるやり方です。

 削減を推進する段取りを明記した「工程表」も昨年末に閣議決定しました。厚労省の審議会で示されている改悪案のほとんどは工程表の具体化です。経団連や財務省などが、負担増や給付削減を繰り返し迫る根拠にもしています。衆院で審議入りした「年金カット法案」の年金額改定ルール変更も、工程表の一環です。社会保障の安心と安全を揺るがす工程表は撤廃が求められます。

 16年度予算では自然増の容赦ない削減によって、診療報酬がマイナス改定され医療現場に苦難と困難をもたらしました。17年度予算では厚労省の概算要求段階で6400億円に抑えた自然増をさらに1400億円カットするとして制度改悪を加速しています。

 17年度予算で焦点なのは、医療では後期高齢者医療制度の保険料軽減措置の撤廃、70歳以上の高齢者の高額療養費の月額上限引き上げ、介護では「高額介護サービス費」の月額上限引き上げなどです。まさに手あたり次第です。高齢者をはじめ国民の暮らしの実態を無視した改悪は中止すべきです。

再生と拡充に転じてこそ

 負担増などで国民が必要な医療や介護から締め出されれば、重症・重度化が進み、かえって将来の社会保障費を膨張させかねません。“削減ありき”のやり方の矛盾は明らかです。製薬大企業のもうけのための高薬価を根本的に見直すなど税・保険料の使い方、集め方をあらため必要な予算を確保し、社会保障を再生・拡充させることが不可欠となっています。


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