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2016年11月3日(木)

主張

公布70年を迎えて

憲法の“初心”生かすことこそ

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 日本国憲法を守り生かすのか、それとも安倍晋三政権が狙う改憲で「戦争する国」に突き進むのか、憲法をめぐるせめぎあいが激しくなる中で、1946年11月3日の憲法公布から70年を迎えます。憲法は翌47年5月3日に施行されました。憲法が制定されてから70年間、一度も改正されず現在に至っているのは、日本国憲法が世界でも先駆的なもので、国民に定着し、度重なる改悪の策動にもかかわらず国民が改定を望まなかったからです。公布70年を機に憲法の値打ちを見つめなおし、“初心”を生かすことこそが重要です。

平和と民主主義が原点

 日本国憲法が制定・公布されたのは、2000万人を超すアジアの諸国民と310万人以上の日本国民が犠牲にされた、アジア・太平洋戦争での日本の敗戦から1年余り後のことでした。

 「日本国民は、(中略)政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」。日本国憲法が前文の冒頭に掲げるこの言葉は、まさに憲法の初心そのものです。

 当時の日本政府は、日本の非軍事化と民主化を受け入れて降伏したにもかかわらず、憲法については戦前以来の明治憲法の部分的手直しで乗り切ろうとしました。マッカーサーを最高司令官とする占領軍(連合国軍総司令部=GHQ)はそれを許さず、民間の案なども参考に草案を作成しました。日本政府はそれを受け入れて政府案を作成し、半年近い国会審議でも修正を加え、制定に至ったのです。

 憲法の制定作業を支え、憲法学者としても活動した佐藤功氏(故人)は、55年に出版しつい先日復刻された『憲法と君たち』の中で、日本国憲法は明治憲法のもとでの間違った政治を繰り返さないため、民主主義と基本的人権の尊重を原則にしたが、「一番ほこってもよい」のは二度と戦争をしないことをはっきり決めたことだと指摘しています。「ほかの国ぐにはまだしていないこと」を「日本がやろうというわけだ」―と。「憲法が君たちを守る。君たちが憲法を守る」。佐藤氏の言葉です。

 日本国憲法を変えてしまおうという改憲勢力はしばしば、憲法は「押し付けられた」ものだといいます。しかし、戦争に反対し、「国民が主人公」の政治を求め続けてきた戦前・戦後の国民のたたかいを振り返れば、日本国憲法を「押し付け」などと描くのは一面的です。戦前戦中、命懸けで戦争に反対した日本共産党が、戦後も他党に先駆けて「新憲法の骨子」を発表(45年11月)し、「主権は人民にある」と主張、その後の憲法制定議論に影響を与えたといわれていることも特筆すべき事実です。

初心否定する改憲許さず

 今年、教育学者の堀尾輝久氏が、戦争放棄、戦力不保持をうたった憲法9条を46年1月に提案したのもマッカーサーではなく、当時首相だった幣原(しではら)喜重郎だったという史料を発掘して話題になりました。改憲勢力の「押し付け」憲法論はいよいよ通用しません。

 日本国憲法の平和主義、民主主義、基本的人権の尊重の原則を丸ごと踏みにじっているのが自民党の憲法改正草案です。憲法の“初心”を踏まえ、なによりこの改憲案は許さないことがいま重要です。


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