2016年10月31日(月)
主張
保育所申し込み
「保活」に苦しむ社会は異常だ
来年4月から子どもを認可保育所に入れる申し込みの手続きが、自治体の窓口で始まっています。安心できる保育所に入れることができるかどうか。親たちは不安と焦りを抱えながら「保活」に必死です。「子どもを預け働きたい」という当たり前の願いをかなえることが、これほど“狭き門”にされていることは、あまりに異常です。今春、「保育園落ちた!」とつづられたブログが国会で大問題になったというのに、安倍晋三政権は認可保育所の大幅増設に後ろ向きの姿勢のままです。「保活」に苦しまなくていい国にするため、政治の役割が重要です。
神経をすり減らす親たち
「近くの認可保育所に入れるのはかなり厳しいと役所でいわれてしまった」「子どもを預けられないと仕事に戻れないのに」―。来年4月からの認可保育所入所のための申請書類の配布が市区町村の窓口で開始される中、親たちから不安と懸念とともに、現状の打開を求める切実な声が相次いでいます。認可保育所に入れなかった場合に備え、自治体の独自の基準で運営する認可外施設などにも申し込んでも、すでに100人程度が「待機中」という施設も少なくなく、親の焦りは募るばかりです。
厚生労働省のまとめでは今年4月に、認可保育所を希望しながら入れなかった子どもは全国で2万3553人と2年連続で増加となり、やむをえず認可外施設に預けた子どもなどを含めると約9万人が待機児という深刻な状況です。このため認可保育所に子どもを入れるために、親が奔走する「保活」はますます激化しています。
「おなかが大きいときの施設見学は大変だった」「授乳が必要な子を連れ何度も役所にいかなければならなかった」「入れないと職を失ってしまう不安があった」。厚労省が今春実施した「保活」実態調査(約5500人回答)は、親たちが保育所探しで神経をすり減らしている現実を浮き彫りにしています。4月入所が申し込めるよう出産月を調整したり、育児休業を早めに切り上げたり、待機児の少ない自治体に転居したり―。「保活」を苦労・負担と感じる人は回答者の8割以上です。「『保活』などという言葉が必要のないよう保育施設や質を充実させて」との意見はあまりに当然の願いです。
安倍政権が掲げる「待機児ゼロ」は、「規制緩和」によって子どもを施設に詰め込むことや、施設基準を緩めた認可外施設の増設などが柱です。保育所増設のために不可欠な保育士の処遇改善もきわめて不十分です。保育の質を低下させる「対策」では、安全で安心できる保育施設の拡充はできません。
国と自治体は責任果たせ
保育所増設・保育士処遇改善を求める親や保育士の自治体への要請が各地で行われ、11月3日には東京で大集会も開かれます。「保活」に苦労しないと保育所に入れない国で、安心して出産して子育てができるはずはありません。
児童福祉法は、自治体に対して保育の実施義務を定めています。保育を国民に保障することは国と自治体の責任です。政府と市区町村はただちに待機児問題が打開できるよう、公立保育所を中心に認可保育所整備に真剣に取り組むべきです。そのために国有地無償提供などの支援を含め知恵と工夫を尽くすことが急務です。