2016年10月25日(火)
国連軍縮週間始まる
核兵器禁止条約への動き加速
問われる日本政府の姿勢
核兵器禁止条約を実現するための国際的な動きが加速する中、24日から国連軍縮週間が始まりました(〜30日)。「核兵器のない世界」の実現に向けて、唯一の被爆国である日本の姿勢が厳しく問われています。
今年の2月、5月、8月の計3回わたり、核兵器禁止条約を含む具体的な措置を議論する初めての作業部会が欧州国連本部(ジュネーブ)で開かれました。最終会合では、核兵器禁止条約の交渉を2017年に開始するよう国連総会に対して求める報告が、国連加盟国193カ国の過半数の賛成で採択されました。しかし、日本は作業部会の設置にも消極的で、採決に棄権しました。
さらに今月の3日から開催中の第71回国連総会第1委員会(軍縮・国際安全保障問題)では、核兵器を禁止する法的措置をめぐり、国際機関や非政府組織(NGO)なども参加して交渉する国際会議を17年(3月27〜31日、6月15〜7月7日)に招集するとした決議案が提出されています。19日時点で39カ国(本紙取材)が支持を表明し、11月上旬までに賛成多数で決議案が採択される可能性が高いと見込まれますが、日本はいまだに背を向けています。
核兵器廃絶に向けて世界が本気で取り組みを巻き起こす中、日本はそうした流れを妨害し、核保有国5カ国(米英仏中ロ)の代弁役を果たしています。核保有国が国連作業部会をボイコットするもとで、「核保有国の参加する場で議論すべきだ」「ステップ・バイ・ステップ(=段階的な前進)が唯一の方法である」と一貫して主張し続けています。
その背景にあるのは米国の「核の傘」=核抑止力への固執です。
8月には安倍晋三首相がオバマ米大統領に対して、「核先制不使用」に反対の考えを伝えたと報じられています。稲田朋美防衛相も11日の参院予算委員会で、過去に「日本が核保有を検討すべき」とする発言を追及されたのに対し、「現在、核保有は全く考えていない」と述べるにとどまり、発言を撤回しませんでした。
大局的に見れば、核兵器固執勢力が国際的に追い詰められています。今年は、国連総会が核兵器の廃絶を国際社会の目標に掲げた第1号決議を採択して70年。核兵器の非人道性を告発し、核兵器禁止条約を求める世界の圧倒的な流れに対し、日本政府が「核の傘」にしがみつづけるのは恥ずべき姿です。(吉本博美)
16年核兵器をめぐる日本の動き
2月●佐野利男軍縮大使が国連欧州本部核軍縮作業部会で、核兵器禁止条約の交渉開始について「まだその段階ではない」と発言
4月●「憲法9条は一切の核兵器の保有および使用を禁止しているわけではない」とする答弁書を閣議決定
G7広島外相会合
5月●オバマ米大統領が広島訪問
8月●安倍晋三首相が核先制不使用反対を米大統領に伝えたと報道
国連作業部会の最終会合で、国連総会に核兵器禁止条約の交渉を17年に開始を求める報告が採択されるも日本は棄権
10月●稲田朋美防衛相が「将来的に核兵器保有の可能性を検討すべき」とする過去の発言の撤回を拒否