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2016年10月24日(月)

電通 過労死・自殺 1991年・2013年も

繰り返す悲劇

政府、長時間労働規制怠る

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 広告代理店最大手の電通(東京都港区)で、昨年12月に入社1年目の高橋まつりさん=当時(24)=が長時間労働のすえに過労自殺しました。電通では、明らかになっているだけでも、1991年、2013年に過労死・過労自殺が起こっています。なぜ、悲劇が繰り返されるのか。長時間労働の実効ある規制を怠ってきた政府の責任が厳しく問われます。


共産党 2000年に最高裁判決受け追及

 労災申請した遺族らの資料によれば、高橋さんは東京大学卒業後、15年4月に入社、10月に本採用となり、12月25日に亡くなりました。主な業務は、インターネット広告のデータを確認・分析し、改善点などを提案・実行するというもの。これを1週間単位で繰り返し、常に時間に追われます。6月から自動車火災保険の担当となり、10月から証券会社の担当も加わりました。

 電通の労働時間の記録は、労働者の自己申告です。残業時間を取り決めた「三六協定」は月70時間に対し、高橋さんの残業時間は10月69・9時間、11月69・5時間、12月69・8時間とギリギリに収められていました。

 しかし、労災申請にあたって、会社への入退館記録によって集計したところ、うつ病が発病したと推測される日の直前1カ月で130時間を超える残業をしていました。遺族は、三田労働基準監督署から月100時間以上の残業を認定したと説明を受けています。

写真

(写真)電通本社=東京都内

パワハラも

 上司からは「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」「会議中に眠そうな顔をするのは管理ができていない」「今の業務量でつらいのはキャパ(許容量)がなさすぎる」などのパワハラ発言を繰り返されていました。

 会社は今年3月ごろから労災申請の資料提出などに協力するようになり、現在、遺族に謝罪し、再発防止の措置を取り始めています。労働基準監督署が電通とその子会社に立ち入り検査を行っています。

 こうした悲劇が繰り返されるのは、政府が実効ある長時間労働規制を怠ってきたからです。

 入社2年目の大嶋一郎さん=当時(24)=が91年8月に過労自殺し、00年3月の最高裁判決で初めて企業責任を認めました。

過少な申告

 過労自殺に至る構造は、今回の高橋さんと瓜二つです。残業時間は自己申告とされて、サービス残業によって過少申告されており、警備員の巡回記録で長時間労働が明らかにされました。上司が靴の中にビールを注いで飲ますパワハラがありました。

 日本共産党は、98年3月に大森猛衆院議員が追及。00年4月11日に不破哲三委員長(当時)が衆院本会議の代表質問で、志位和夫書記局長(当時)が24日の衆院予算委員会で、電通過労自殺訴訟をとりあげ、長時間労働の規制とサービス残業の一掃を求めました。

 森喜朗首相(当時)は、不破氏に「時間外労働の限度基準を順守させること等により、長時間労働の抑制やサービス残業の解消につとめる」と答えました。

 98年の労働大臣告示では残業時間の限度は月45時間とされています。ところが、労働基準法には、残業時間を青天井に許す抜け穴が温存されたままです。

「残業代ゼロ制度」など狙う安倍政権

労働時間の上限規制こそ

 厚生労働省は大臣告示で残業時間を月45時間までとしていますが、労働基準法に基づいて残業時間を取り決める「三六協定」で、「特別条項」を結べば、際限なく残業時間を延長できます。このため、厚労省の基準は企業によって無視されています。

 一方で、日本共産党の論戦が実って、2001年に厚労省がサービス残業防止のため、企業に労働時間の適正な把握を求める「4・6通達」が出され、是正が大きくすすみました。高橋まつりさんの過労自殺について、1991年の過労自殺事件よりも迅速に、電通の責任が認定された背景になっています。

 このサービス残業是正の通達を葬り去ろうと動きだしたのが、安倍晋三政権です。「過労死促進法案」「残業代ゼロ制度」と呼ばれる「高度プロフェッショナル制度」の導入や裁量労働制の拡大を行おうとしています。

 高度プロフェッショナル制度は、一定年収以上の労働者の労働時間規制を適用除外にするというものです。裁量労働制は、どんなに働いても、あらかじめ決められた時間だけ働いたことに見なす制度で、企画業務型裁量労働制を「管理・評価を行う業務」や営業に広げようとしています。

 高橋さんのような業務に適用され、ますます過労が続発するおそれがあります。

 これに対して、日本共産党、民進党、生活の党(現・自由党)、社民党の野党4党は4月19日、長時間労働規制法案を国会に提出しました。内容は、労働時間の延長の上限規制、勤務間インターバル規制の導入、裁量労働制の要件の厳格化―などです。

 過労自殺・過労死の悲劇を繰り返さないため、「1日8時間労働」を大原則に、労働時間に上限を設ける規制が、焦点になっています。


電通・過労自殺 高橋さんSNSで訴え

職場では言い出せず

 電通で過労自殺した高橋さんは、インターネット上のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や友人とのやりとりでは、長時間労働の苦しさを訴えていました。しかし、「局会」「部会」と呼ばれる宴会の幹事まで仕事の一環とされ、パワハラ発言がまん延する職場にその声は届きませんでした。

 電通に対しては、過労死・過労自殺への警鐘が鳴らされ続けていました。

 新聞、放送、出版、広告などメディア関連の労働組合が集まる日本マスコミ文化情報労組会議では、15年10月の会議で13年の30代男性の過労死事件について報告があり、広告業界がネット広告の拡大で労働強化を起こしており、「経営はギリギリの人員しか認めず、非正規雇用を増やしている」と告発していました。広告労働者は「高橋さんは、ネットでの訴えを職場では言いだせず、被害を止められなかった」と悔しさをにじませました。


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