2016年10月24日(月)
戦争法「新任務与える」
安倍首相、自衛隊観閲式で訓示
安倍晋三首相は23日、陸上自衛隊朝霞駐屯地の朝霞訓練場(埼玉県朝霞市、新座市)で行われた自衛隊観閲式での訓示で、「平和安全法制によって諸君たち(自衛官)には新しい任務が与えられることとなる。そのことを肝に銘じ、精強なる自衛隊をつくりあげてほしい」と述べ、昨年強行成立させた安保法制=戦争法に基づく新任務の付与に向け、さらなる能力・態勢強化を指示しました。
政府が「駆け付け警護」などの最初の新任務付与を検討している南スーダンPKO(国連平和維持活動)の自衛隊部隊については、「危険の伴う自衛隊員にしかできない責務を果たしている」と賛辞。新任務に伴うリスクを示唆しました。
南スーダン情勢については、「道路整備に励む自衛隊員の周りには決まって子どもが集まる」などと述べるにとどまり、事実上の内戦状態の実態にはふれませんでした。
観閲式は陸海空の各自衛隊が毎年持ち回りで開催しており、今年は陸自が担当。自衛隊からは隊員約4000人、車両約280両、航空機約50機が、米軍からは海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイ2機や、陸軍が中東などに投入しているストライカー装甲車などが参加し、日米軍事一体化を強調した内容となりました。
解説
PKO新任務へ“地ならし”
安倍晋三首相の訓示は、「積極的平和主義」を口実にして、南スーダンPKO(国連平和維持活動)部隊への安保法制=戦争法に基づく新任務付与に向けた“地ならし”ともいえるものです。
首相は戦争法に基づく新任務について、「すべて尊い平和を守り抜き、次の世代へ引き渡していくための任務だ」などと、憲法9条が禁じる海外での武力行使をあらゆる場面で解禁する同法の狙いをあべこべに描きました。
さらに首相は、自衛隊が1992年に初めてPKOに部隊を送ったカンボジアからも、南スーダンに部隊が参加しているとして、「自衛隊がカンボジアに植えた平和の苗は実を結び、アフリカで次なる苗を育もうとしている」などと、PKOの意義を強調しました。
しかし、国連PKOは1990年代後半から変質を続け、今や先制攻撃すら容認するまでに先鋭化しています。カンボジアと南スーダンのPKOを同列視するような首相の説明は、実態と大きくかけ離れています。
(池田晋)