2016年10月22日(土)
主張
南スーダン派兵
新任務は論外、撤退こそ必要
南スーダンPKO(国連平和維持活動)について安倍晋三政権は、今月末で期限が切れる自衛隊の派兵期間を来年3月末まで延長することを来週初めにも閣議決定しようとしています。激しい戦闘が続く南スーダンでは、自衛隊派兵の前提となる停戦合意など「PKO参加5原則」は崩壊しており、派兵延長は許されません。さらに安倍政権は、11月下旬に派兵する交代部隊に、戦争法(安保法制)に基づく「駆け付け警護」などの新任務を付与する閣議決定を同月中旬に狙っています。自衛隊員が「殺し、殺される」初の事態を生み出す新任務付与など論外です。
内戦状態の悪化は明らか
南スーダンでは7月上旬に自衛隊が駐留する首都ジュバで、大統領派の政府軍と副大統領派の反政府勢力の間で大規模な戦闘が発生し、数百人が死亡しました。この時、自衛隊宿営地近くでも激しい銃撃戦が起きました。その後も各地で両派の戦闘は続いており、昨年8月の和平合意は無実化し、内戦状態の悪化は明らかです。
ところが、安倍政権は自衛隊派兵ありきの立場から、南スーダン情勢の危険をことさら小さく見せ、「内戦」であるとも、「戦闘」が起こっているとも認めようとしません。安倍首相にいたっては「永田町と比べればはるかに危険」(12日、衆院予算委員会)と述べるだけで、現地の情勢をまともに検討する姿勢さえ見られません。
8日にジュバを7時間だけ視察した稲田朋美防衛相も「現地は落ち着いている」と繰り返しています。しかし、同じ8日にはジュバに向かう幹線道路で民間人の車列が襲撃され、21人が死亡する事件が発生しています。
南スーダンPKOを担う国連南スーダン派遣団(UNMISS)は防衛相訪問直後の10日、「最近の数週間に各地で暴力と武力紛争の報告が増加していることを極めて懸念している」との声明を発表しました。その後も両派の戦闘は各地で発生し、多数の死者が出ています。自衛隊派兵の前提が崩壊しているのは明白であり、派兵延長ではなく撤退こそ必要です。
防衛省が自衛隊員の家族への説明のため、「駆け付け警護」で「武力紛争には巻き込まれることはない」などとする応答要領を作成していることが、日本共産党の井上哲士議員の質問(20日、参院外交防衛委員会)で明らかになったことも重大です。
「治安情勢が悪化している中で、自衛隊自身が『駆け付け警護』を行えば…紛争に巻き込まれることになるのでは」との質問に「南スーダン共和国が国連PKOの活動に同意し、受け入れている状況においては、武力紛争に巻き込まれることも無い」と答えるよう例示するなど、無責任な資料です。
政府軍との交戦の危険も
「駆け付け警護」は、NGO関係者や他国のPKO兵士らを救助するため武器使用が認められています。7月のジュバでの戦闘では、政府軍がNGO関係者らが滞在するホテルを襲撃しています。他にも、UNMISSの施設や兵士への攻撃など敵対行為が多数報告されています。「駆け付け警護」で自衛隊が政府軍などと交戦する危険は大いにあります。
自衛隊は直ちに撤退し、非軍事の人道・民生支援の抜本的強化こそ求められています。