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2016年10月22日(土)

日航、人員不足で乗務延長案

組合「解雇者を復帰させよ」

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 日本航空は、史上最高の利益を更新する一方、人員不足のためにパイロットと客室乗務員の年間乗務時間を延長して対応しようとしています。職場からは、「いまでもキツイのに、これ以上は無理だ」と怒りと悲鳴があがっています。(田代正則)


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(写真)解雇者の職場復帰を求めてJALプラザ有楽町前に座り込む日航労働者と支援者たち=4日、東京都内

 日航は7月15日、パイロットの乗務時間の上限を、現在の月75時間、年間900時間から、月80時間、年間960時間に延長するよう提案しました。

 客室乗務員に対しては、11月から年間乗務時間の上限を990時間から、1000時間に増やし、次の業務までの間隔も短縮しようとしています。「1000時間」はあまりに衝撃が強いため、会社は「990時間プラス10時間」と説明しています。

 日航の資料によると、パイロット数は今年3月31日時点で、1913人。会社提案のように乗務時間が1人あたり年60時間増えれば、あわせて11万4780時間増となり、900時間を乗務するパイロット128人分に相当します。客室乗務員数は5565人。全員が10時間ずつ乗務時間を延長すると、57人分に相当します。

 日航乗員組合、日航機長組合、日航キャビンクルーユニオン(CCU)の3組合は、2010年末に解雇されたパイロット81人と客室乗務員84人を職場に戻して人員不足を解消し、空の安全を守るよう求めています。

 最高裁で9月、解雇を強行する過程で、労働組合が解雇回避策を話し合おうと行っていたストライキ権投票を妨害した事件で、日航の不当労働行為認定が確定しました。国際労働機関(ILO)からも、解雇者の職場復帰に向け、「意義ある対話」を行うよう会社は勧告を受けています。解雇者の職場復帰を求める労働組合と真摯(しんし)に向き合うことが必要になっています。

首切りして人が足りないから勤務強化なんて

退職・病人が続出

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(写真)解雇者を職場に戻せと訴える日航労働者と支援者たち=東京都内

 日本航空の営業利益は2011年度から5年連続1500億円を超え、今年3月期は2091億円と過去最高を更新しました。その一方で、人員不足は深刻です。12〜16年度までの中期経営計画はもうすぐ満了しますが、20年の東京オリンピックや羽田空港の発着枠拡大を見すえた中長期計画を出せるのかと社内に疑問視する声があがっています。

パイロットの場合

 10年末にパイロット81人を解雇強行してから、パイロット180人以上が日航に見切りをつけ、他社に転職しています。中小規模の航空会社をつくれるほどの人数です。

 日航が900時間を960時間に延長するとしている航空機の年間乗務時間は、一般労働者の年間労働時間(厚労省目標1800時間)と比較して、短いと誤解されがちですが、その算定は発着場を動き出して離陸し、着陸して発着場に止まるまで。事前のブリーフィング(飛行計画の検討)など乗務の前後に国内線で2時間程度、国際線で2時間半以上の地上業務があります。

 ニューヨーク便など長距離路線の場合、1回のフライトに12時間前後かかり、前後の業務とあわせて15時間近く拘束されます。「1日8時間労働」が物理的に不可能なうえ、帰宅まで数日かかり、時差の影響を受けます。

 日航はバンクーバー(カナダ)便など、できるだけ長い距離でもパイロットの交代要員をのせずに飛ばします。のせても3人編成など極力少人数にするため、欧米各社と比較して負担が増します。

 国内線も1回のフライトは短時間ですが、1日に離発着を繰り返すなど別の負担があります。また、パイロットは乗務以外にも地上でさまざまな仕事をこなします。

 ライバル社、全日空の場合、年間乗務時間の上限は960時間とされています。しかし、「全日空は、長距離路線から帰着後、3日の休日が保証されているため、実際には900時間にも到達しない」と、日航乗員組合の藤崎昌久副委員長は説明します。日航では、「やむをえない場合」だけだとされていた3日目からの業務がなし崩し的に常態化しています。

 乗務時間延長の会社提案について日航乗員組合と機長組合が緊急アンケートをとったところ、「受け入れられる」と答えたのは、わずか6%。パイロットから怒りと悲鳴があがりました。

 「このままでは、近いうちに病人が続発するし、それは会社の崩壊を意味する」(ボーイング737機長)

 「これ以上きつい勤務は安全上問題がある」(ボーイング737機長)

 「年間898時間飛んだ。とんでもなく厳しい経験だった。960時間を受け入れれば、高稼働が恒常化される」(ボーイング787副操縦士)

 「首切りをして、労働条件を下げるだけ下げて、人が足りないから勤務の強化? 馬鹿にしている」(ボーイング767副操縦士)

 「条件付きで受け入れを考える」というパイロットでも、「まずは整理解雇の解決が先ではないか。退職者に戻ってきてもらったうえで、それでも不足していれば検討すべきだ」(ボーイング777機長)と主張しています。

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客室乗務員の場合

 客室乗務員の職場では、年間乗務時間1000時間という提案に加え、乗務から帰着後の休日も短縮しようとしています。

 84人を解雇した後に、2970人を新規採用していますが、年間600人近くが自主退職しています。

 日航キャビンクルーユニオン(CCU)のアンケートに切実な訴えが続きます。

 「最高益まで出して、このような健康阻害に直結するような勤務提案は到底受け入れられません」

 「休日は時差を戻すためと事前準備の時間になり、プライベートな時間をすごす余裕がなくなります。同期もこの勤務提案が出てから、毎月のように退職しています」

 「安全を維持するためにも、これ以上稼働をあげることはやめてほしい」

体調を崩す事例も

 客室乗務員は乗務前、乗客に提供する機内食で、子ども用やアレルギー、宗教上の理由などによる特別食のチェック、路線ごとに違うサービス内容の確認などに時間がかかります。

 客室乗務員が乗務中に体調を崩す事例も出ています。昨年秋、客室乗務員が自分自身の具合が悪くなって、「お客さまにお医者さまはいませんか」とアナウンスするドクターコールをしました。頭痛、左手がしびれ、酸素吸入をおこなったといいます。

 今年の初夏、ニューヨーク便の客室乗務員が、往路から「頭が痛い」と言いながら乗務し、復路で成田空港に到着後、車いすにも乗れない状態で、救急車で病院に運ばれました。

 会社は、乗務時間延長と休日短縮をしようとしながら、客室乗務員に配布した文書では、「意識改革」を呼びかけ、「必要以上に早く出社することなく、帰着後の業務も効率的に行う」と自己責任であるかのように指導しています。

 日本共産党の山添拓参院議員は20日の国会質問で、「日航の職場は疲弊している。今年に入って、ドアモードの誤操作、カートの転倒など不安全事例が報告されている」と警鐘を鳴らしました。

 CCUは、大量退職の悪循環を断つためにも、経験ある解雇者を職場復帰させるよう求めています。


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