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2016年10月17日(月)

主張

「民泊」議論

緩和でなく安全ルール確立を

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 空き家などを宿泊に使う「民泊」をめぐって大都市部や観光地で近隣住民とのトラブルなど問題が顕在化しています。「観光立国」を経済政策アベノミクスの柱の一つに掲げる安倍晋三政権の下で、「民泊」を広げるための「規制緩和」が検討されていますが、地元からは警戒の声が上がっています。

無許可施設の広がり懸念

 「民泊」について、政府の検討会は「住宅(戸建住宅、共同住宅等)の全部又は一部を活用して、宿泊サービスを提供するもの」と定義づけています。インターネットを通じて、空き家を短期で貸したい人と旅行者をマッチング(条件が一致するものを照会)するビジネスとして世界各地で展開され、日本でも、東京都、大阪府などの主要都市、京都、奈良などの観光都市で急速に広がっています。

 問題は、「民泊」施設の多くで、公衆衛生上の規制を規定した旅館業法、建物の安全基準を規定した建築基準法、火災が発生した際の避難経路の確保を定めた消防法などの法律に違反するケースが後を絶たないことです。

 京都市が今年公表した民泊施設実態調査では、市内の「民泊」施設数2702件のうち旅館業法上の無許可と推測される施設は1847件で、68・4%に達していました。全国の自治体には、マンションの一室を使った「民泊」をめぐり「利用者の大きな話し声やキャリーバッグを引く音などの騒音がひどい」「オートロック機能の意味がなくなり不安だ」などの多くの苦情が寄せられる事態も起きています。常駐スタッフが不在の「民泊」では、火災時の避難誘導が考慮されていない実態もあります。

 安倍内閣は8月に閣議決定した「未来への投資を実現する経済政策」で観光政策を「成長戦略」の柱に位置づけ、「外国人観光客4000万人時代に向けたインフラ整備」などを打ち出しています。そのために建物の容積率の規制を緩めたホテルの増設促進、規制緩和による「民泊」の普及を本格化することを検討しています。

 都市や地域ごとで規制緩和を先行実施させる「国家戦略特別区域」では、「民泊」の最低滞在日数を短期でも可能にすることで利用を促進させることや、一定の届け出さえすれば営業を認めることなどが具体化されています。2017年の通常国会に、「民泊」関係の新法を提出する動きもみせています。

 外国人旅行者の急増を背景に、多くの人が宿泊先を確保することが困難な状況にあるのは事実です。しかし、最低限の安全、衛生、防災設備が万全といえない「民泊」を認めることは、宿泊者の安全を保障できないだけでなく、今まで以上に近隣トラブルなどを増幅させる状況を招きかねません。

許可制の堅持が不可欠

 現在も旅館業法の許可が不要の簡易宿所として「イベント民泊」がありますが、これらは目的や期間が限定されているものであり、管理者が常駐するなどしています。

 外国人観光客に日本の文化や風習を安心して味わってもらうためにも、日本の旅行客やビジネスマンが宿泊先確保に困らないようにするためにも、違法な「民泊」の野放しや危険な規制緩和でなく、旅館業法などの諸法規に適合した許可制を堅持したルールにもとづく整備こそ必要です。


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