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2016年10月16日(日)

2016とくほう・特報 シリーズ部活って何

なぜ過熱化解消されない?

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 「部活で遅くなり、授業の準備が十分にできない」「お盆と年末年始しか休みがなくて、もうくたくた」―。中学校や高校での部活動が過熱化し、教職員も子どもも苦しんでいます。時には、教育現場にあってはならない暴言や暴力まで…。シリーズで学校の部活動問題を考えていきます。(取材班)


先生 土日を休めと言われても…

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 「子どもたちに『がんばってー』と声をかけるぐらいしかできなくて。1日がかりの練習試合でも、私にとっては苦痛の時間でしかありません」

 青森県内の若手の中学校教員。教員はどこかの部活動の顧問を引き受けなければなりません。バレーボールの競技経験は皆無なのに男子バレー部の副顧問をしています。

 同部の顧問は3人いますが、練習の時も、練習試合や競技大会の時も、3人全員がいなければいけない決まりです。

 「学校全体が勝ちにこだわっているんです。『優勝でなければだめ。準優勝は負けなんだ』なんて言う。月曜の朝は教員も子どもも疲れているのがわかります」

 野球部の顧問をしているあるベテラン中学校教員は、若かったころを振り返り、「休んじゃいけないという強迫観念があった」と言います。休日も朝7時から夕方までびっしり練習し、大会前日も練習しました。最近になってやっと、前日練習に大して意味はなく、むしろクールダウンが必要だと気付き、やめました。

 今は、県の指針や県内校長会での申し合わせで、部活動の休止日を決めていますが、なかなか守られません。

 土日は大会が入ります。強くなればなるほど、他校から練習試合を申し込まれることも増え、「『せっかく申し込んでくれたから』とか『もう次から呼ばれなくなるんじゃないか』とか考えてしまって、断りにくいんです」。出場する大会を減らしたいと思っても、「出る資格があるのになぜ出ないのか」と保護者から苦情がくることも。土日は休みにくいのが現実です。

保護者 試合のたびに車で送迎大変

 実は、保護者も大変です。青森県内では、他校や遠くの施設での試合の際には、車での送迎が欠かせません。その際、教員の運転は禁止されており、保護者が子どもの送り迎えをしなければならないのです。

 ある教員は「さまざまな事情で送迎できない保護者もいます。でも、他の保護者に毎回頼むのはしのびないと、わが子に部活をあきらめさせる保護者もいる」と話します。

 送迎中に、事故も時に起こります。今月8日には、石川県内の公立中学校の野球部員を乗せたマイクロバスがワゴン車と正面衝突し、部員2人が死亡。運転していたのは保護者でした。

子ども 好きだけど…休みがほしい

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 「サッカーは好きです。でも、せめて月に1日か2日休みがあれば、もっとがんばれるのに」

 こう話すのは、神奈川県内の公立中学校に通う佐藤隼さん(仮名)です。サッカー部。

 「こうしようと考えていたことが、試合中に生きた時が楽しい。普段の練習の成果が発揮された瞬間ですね」と話します。

 が、超ハードな練習が悩みでした。休みはお盆と年末年始の3、4日間だけ。朝も6時半から8時まで練習です。「『おまえらサッカー好きなんだろ』と、毎日サッカーができる環境をつくってやってるみたいな感じ」。休みを取りたいと思っている人はほかにもいますが、「意見を言いにくい雰囲気がある。『だったら部活来なけりゃいいじゃん』みたいになる」。

 佐藤さんは、顧問からのアドバイスの仕方も納得できませんでした。「何が悪いかわからなくて困っているのに、『何やってんだ』って怒鳴られるだけだと…。スポーツって最終的には気合が大事という面はあるけれど、やる気だけでなく技術も大事。具体的なアドバイスの方が後につながると思います」

部活動を定義することから始めよう

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(写真)神谷拓さん

 教員も子どもも保護者もさまざまな矛盾を感じていますが、なかなか簡単には解消されない…。

 「それは『部活動とは何か』という認識がバラバラだからです」

 こう指摘するのは、宮城教育大学准教授の神谷拓さんです。

 神谷さんは、若者を使いつぶす「ブラック企業・ブラックバイト」と同様、子どもや教師を使いつぶすのが「ブラック部活」だといいます。

 そもそも部活動の指導は、教員の職務として明確に定められてはいません。学習指導要領では、部活動は学校教育活動の一環としながらも、生徒の自主的、自発的な参加によって行われる教育課程外の活動として位置づけられているにすぎません。校長が教員に命じることができる例外的な超過勤務業務にも、部活動は含まれていません。

 ところが一方で、対外試合の勝敗にとらわれ過ぎた反省から禁止された全国大会が、徐々に解禁されていき、過熱化に拍車をかけます。部活動の競技成績は、進学にも活用されてきました。

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(写真)部活動の現状や悩みを語り合う青森県教職員組合の組合員ら=1日、青森市

 「部活動にはどういう教育的な意義があるのか、という議論を尽くさないまま教員がかかわらざるを得なかったことが、さまざまな矛盾を大きくしてしまった」と神谷さん。さらに、教員の免許法には部活動に特化した科目が位置づけられていないため、「今は『無免許運転状態』だ」とも強調します。

 「『部活動とは何か』を定義した上で、教員としてここまではやろうという区分けをはっきりさせる。そこから始めることが大事だと思います」

■体験や思いをお寄せください

 シリーズ「部活って何?」では、運動部活動を中心にそのあり方を考えていきます。皆さんの体験や思いをぜひお寄せください。

 hensyukoe@jcp.or.jpまでメールで。「部活って何?」とお書きください。


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