2016年10月13日(木)
主張
沖縄・高江の着陸帯
強行に道理なし、無条件返還を
安倍晋三政権は、沖縄の米海兵隊北部訓練場(東村、国頭村)の部分返還を口実に建設を強行しているオスプレイ着陸帯について「年内に実現できるよう工事を着実に進める」(菅義偉官房長官)と表明し、「年内完成」へ執念を見せています。オスプレイ着陸帯の建設は、周辺住民の生活と国の特別天然記念物ノグチゲラやヤンバルクイナをはじめ希少な動植物が生息する自然豊かな“やんばる(本島北部)の森”を乱暴に破壊する計画です。安倍首相が繰り返す「沖縄の基地負担軽減」に必要なのは、着陸帯建設を直ちに中止し、無条件での返還を求めることです。
狙いは基地機能の大増強
北部訓練場の部分返還は、1995年の米海兵隊員らの少女暴行という痛ましい事件と県民の激しい怒りの広がりを受け、日米両政府が翌96年、沖縄の米軍基地の「整理縮小」のためとして、米海兵隊普天間基地(宜野湾市)の「移設」=新基地建設などと並び、SACO(沖縄に関する特別行動委員会)最終報告に盛り込んだ計画です。
計画は、北部訓練場の過半(約4000ヘクタール)を返還する代わりに二つの条件を付けました。一つは、訓練場として残る区域から海に出入りできる新たな土地と水域を提供することです。海兵隊の上陸侵攻訓練を可能にするためです。
もう一つは、返還予定区域にある「ヘリコプター着陸帯」を残る区域に「移設」することです。東村高江区の集落を取り囲む形で、新たに4地区6カ所の着陸帯が建設されることになりました。
当初は「ヘリコプター着陸帯」とされていましたが、12年から垂直離着陸機オスプレイの普天間基地への配備が強行され、実態は「オスプレイ着陸帯」となっています。普天間基地に代わる名護市辺野古への新基地建設計画と一体となった基地機能大増強の動きです。
新たな着陸帯は既に1地区2カ所が15年に米側に提供され、オスプレイによる深刻な騒音被害が激増しています。
安倍政権はさらに残り3地区4カ所の完成のため、7月の参院選直後からなりふり構わない強権を発動しています。オスプレイ配備と新たな基地建設に反対する伊波洋一氏が参院沖縄選挙区で安倍政権の現職大臣に圧勝した投票日翌日に建設に着手し、全国から機動隊員を動員して反対住民らを力ずくで排除し、工事を強行するという異常極まるやり方です。
日本共産党の赤嶺政賢議員が衆院予算委員会(3日)で指摘したように、防衛省は▽動物への影響を配慮して1地区ずつ工事を進めるとしていた計画を3地区同時に改変▽工事用トラックを空輸するため法的根拠のない自衛隊ヘリを投入▽資材を運ぶための工事用モノレールの建設を工事用道路に変更し、3700本以上の樹木を伐採―など無法を続けています。
地位協定も返還義務付け
新たな着陸帯の建設は「使用不可能な約51%の北部訓練場を日本政府に返還する一方、新たに利用可能な訓練場所を開発する」(米海兵隊太平洋基地司令部報告書「戦略展望2025」)のが狙いです。米軍の特権を保障した日米地位協定でさえ、必要がなくなった基地の返還を義務付けています。「北部訓練場の4000ヘクタールは無条件で返還せよ」の声と運動を大きく起こすことが急がれます。