2016年10月10日(月)
主張
「体育の日」
スポーツの権利を国民の手に
きょうは「体育の日」です。1964年の東京オリンピックの開会日の10月10日を記念して、国民の健康・体力の増進、スポーツへの参加を啓発する趣旨で設けられた日です。
遅れたままの環境整備
2011年に制定されたスポーツ基本法の前文には「スポーツは、心身の健康保持増進にも重要な役割を果たすものであり、健康で活力に満ちた長寿社会の実現に不可欠」であると規定されています。
近年は、運動やスポーツに取り組むことによる効果として、健康の増進、健康寿命の延伸が注目されるようになってきています。
しかし、運動・スポーツをやりたいと願っても、なかなかできない現実があるのも事実です。できない理由として「仕事が忙しくて時間がない」、「金がかかるから」、「身近に施設がない」などの調査結果があります。長引く不況で給料が上がらず、長時間過密労働が影響しています。
スポーツ基本法に基づき制定されたスポーツ基本計画では、「成人の週1回以上のスポーツ実施率が3人に2人(65%程度)」となることを政策目標に掲げています。
ところが、15年度の調査では成人の週1回以上のスポーツ実施率は40・4%で、前回の調査(12年度)より7・1ポイント低下しました(内閣府の「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」)。
年代別に見ると、20代と30代の若者の実施率が30%を下回り、他の年代に比べて低くなっています。これは、低賃金で不安定な非正規雇用の増大などを背景に、若者のスポーツをする条件が厳しくなっていることなどの反映です。
障害者(成人)の週1回以上のスポーツ実施率はもっと低くなり、19・2%にすぎません。20年の東京オリンピック・パラリンピック開催が4年後に迫るなかで、バリアフリーの環境整備が望まれています。
しかし、17年度予算のスポーツ庁の概算要求を見ても、スポーツ施設環境整備事業費補助金は24億円で、全体の402億円のうち、わずか6%です。運動やスポーツをしたいと思っても、身近に施設がなければできません。
この現状は、欧米諸国から比べると、大きく立ち遅れています。スポーツ基本法ができてすでに5年がたっています。それにもかかわらず、「スポーツは国民の権利」の保障には、ほど遠い現状にあることを直視することが必要です。
国民のスポーツ環境を整えることは、オリンピックを開催する国として大事な要件になっています。オリンピック憲章は、根本原則に、「スポーツを行うことは人権の一つである」とうたっています。トップ競技と国民スポーツの調和のある発展こそ、オリンピックの目的であることは明らかです。
スポーツ予算の増額を
いま国に一番求められているのは、国民各層が運動・スポーツに親しめる条件を拡充し、多様なスポーツが花開く抜本的な施策を講じることです。
とりわけ、自治体まかせにしないで、国の責務としてスポーツ施設を計画的に整備していくことが必要です。学校の体育施設などの耐震化に即した改築なども緊急の課題です。スポーツ予算の増額、なかでもスポーツ施設の整備予算を増額することが急がれます。