2016年10月6日(木)
きょうの潮流
注目の都議会で豊洲新市場とともに焦点となっているのが、4年後の東京五輪・パラリンピック競技会場の見直しです。将来に負の遺産を残さないためにも舵(かじ)を切るときでしょう▼いまあちこちで問題になっている税金の不正な使われ方や無駄遣い。それだけに五輪に注がれる都民や国民の目も厳しい。膨らむ建設費や経費に不信感や怒りが募り、五輪に巨額を使うぐらいなら他に回せとの声も▼新国立競技場や公式エンブレムをはじめ、つまずきつづき。そこには根っこの部分での思い違いがあるのでは。もともと五輪開催の目的はその理念に奉仕すること。人間性を磨き、平和で差別のない人類の発展に貢献する五輪運動に協力し、広める役割です▼ところが政府が示した基本方針は開催国の“欲望”ばかり。メダルの数や経済効果、世界に国力を発信するという文言が並びます。ほんらいの目的と相反する彼らの姿勢が相次ぐ問題を生み出す土壌にあります▼スポーツライターの小川勝さんは著書『東京オリンピック「問題」の核心は何か』でこの根本を正面から取り上げています。「東京五輪を、政治家や官僚や大企業が利権の内部調整に終始するだけの巨大イベントにしてはならない」と▼都民や国民が求める簡素な大会運営やクリーンな五輪は今後のめざす方向と合致しています。遅くはありません。それを東京五輪が率先して示すことが、スポーツを通してよりよい人間社会をつくるオリンピックの歴史に参加することになるでしょう。