2016年10月4日(火)
主張
横ばいの日銀短観
個人消費の立て直しが急務だ
日本銀行が週明けに発表した短期経済観測(日銀短観、3カ月ごと)で、大企業製造業の業況判断は2期連続の横ばい、非製造業は悪化したことが明らかになりました。日本経済の現状は依然深刻です。先週末発表された一連の経済指標では、8月の家計の消費支出は実質で1年近く落ち込みを続けており、完全失業率も半年ぶりに悪化しました。大企業がもうけを増やせば消費も雇用も改善するという安倍晋三政権の「アベノミクス」の破綻は明白です。「アベノミクス」を中止し暮らしを応援して、経済の6割を占める個人消費を立て直すことがいよいよ急務です。
消費の不振が足引っ張る
日銀の短観は全国の1万社を超す企業に、業況が「良い」か「悪い」かなどを尋ねたもので、サンプルの多さなどで注目されている指標です。結果は「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた指標(「DI」)で集計されます。
9月の調査で、円高の影響を受けた大企業製造業のDIはプラス6で6月の調査と同じ、小売業が消費不振の影響をもろに受けている大企業非製造業は、6月に比べ1ポイント悪化しました。中小企業製造業はDIがマイナス3と、引き続き悪化が続いています。
一方、先週末発表された家計調査報告によると、8月1カ月の家計の消費支出は前年同月に比べ名目で5・1%、実質で4・6%の大幅減少です。消費支出は昨年9月以来うるう年で消費が増えた今年2月を除いて事実上1年間落ち込みが続いており、消費低迷の深刻さを浮き彫りにしています。
日本経済(国内総生産=GDP)の約6割は個人消費です。消費が増えなければ企業の売り上げや生産も増えず、雇用や設備投資も増えません。その個人消費が1年間も落ち込みを続けているというのは全く異常です。日本経済は長期の不況に加え、安倍政権が2014年4月に消費税増税を強行したため、消費が急激に落ち込んだままです。安倍政権も今年10月に予定していた消費税の再増税を2回にわたり延期していますが、異常な消費低迷の長期化はそれにとどまらず、消費を立て直す対策が不可欠なことを示しています。
消費を立て直す一番の対策は、国民のふところを豊かにすることです。安倍政権の「アベノミクス」は、円安や株高で大企業のもうけを増やせば、回り回って雇用や投資が増え、消費も増えるという「トリクルダウン」(滴り落ち)の筋書きですが、もうけは大企業や大資産家のため込みに回って、雇用や消費に回ってきません。大企業のため込みはやめさせ、賃上げなどを実現するとともに、破綻した「アベノミクス」は中止し、国民の暮らしに直接テコ入れすることが不可欠です。
“三つのチェンジ”実行を
そのために政府がとるべき対策は、日本共産党が提案しているように、税金の集め方、使い方、働き方を変える、“三つのチェンジ”を実行することです。大企業や大資産家に応分の負担を求め、社会保障などに優先的に使うこと、労働者を守る本物の「働き方」改革を実現することなどです。
安倍政権が今国会に提出している大型開発へのテコ入れ中心の補正予算案では消費の立て直しに役立ちません。国民の暮らし優先の政策へ根本的に転換すべきです。