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2016年9月30日(金)

市田副委員長の代表質問 参院本会議

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 日本共産党の市田忠義副委員長が29日の参院本会議で行った代表質問は次の通りです。


写真

(写真)代表質問する市田忠義副委員長=29日、参院本会議

熊本地震、風水害の被害――住宅再建の支援拡充求める

 私は日本共産党を代表して安倍総理に質問します。

 まず、熊本地震の被災者のみなさん、一連の台風、大雨、洪水被害にあわれた各地のみなさんに心からお見舞いもうしあげるとともに、被害からの復旧と生活・生業(なりわい)の再建のために政治が全力を尽くすことを、強く政府に求めます。とりわけ、すべての復旧・復興の基礎である住宅の再建については、被災者生活再建支援法を抜本的に改正し、対象を広げ、支援額を500万円に引き上げることを求めます。

戦争法――自衛隊を南スーダンから撤退させ、非軍事の人道民生支援を

 今国会は、参院選後最初の論戦の場となります。

 今回の参院選は、戦後初めて、野党と市民が全国的規模で選挙協力をおこなうという歴史的な選挙となりました。この議場には、全国32の1人区のうち、3分の1をこえる11の選挙区で勝利された、市民と野党の共同の議員がおられます。

 この歴史的状況をつくりだしたのは、安保法制=戦争法に反対するたたかいをつうじて、多くのひとびとが主権者としての強い自覚をもって立ち上がり、「自分たちの政治だから、自分たちで担う」「野党は共闘」と主張した、昨年来、全国でわき起こった、日本の歴史でも初めての市民革命的な動きでした。そして総理、そのうねりを生み出す原因をつくったのが安倍政権がすすめる、立憲主義と憲法破壊の強権政治だったのです。

 安保関連法に反対するママの会の方は、「“安保関連法を廃止に”から始まったママの運動でしたが、与党・野党の議員と懇談を重ねる中で、安保法制が沖縄の基地問題やTPP(環太平洋連携協定)など本当にいろいろな問題とつながっていることに気づきました。選挙で勝って政治を変えることがすべての解決に向かう一歩だと気が付いたのです」と語っておられます。

 安倍政権の暴走が続く限り、このうねりはさらに大きくならざるを得ないであろうことを指摘しておきます。

 4野党は、党首合意の上に、(1)安保法制の廃止・立憲主義の回復、(2)アベノミクスによる国民生活の破壊、格差と貧困の拡大の是正、(3)TPPや沖縄問題など、国民の声に耳を傾けない強権政治を許さない、(4)安倍政権のもとでの憲法改悪反対、という「共通政策」の柱を確認しました。

 総理は、「この道を前へ」が国民の声だと述べられました。しかし、野党と市民が国民的大義のある共通政策を掲げたのにたいして、選挙戦を通じて、「この道」がなにか、具体的には何も語られませんでした。語られたのは「アベノミクスのエンジンをふかす」ということと、野党にたいする「野合」批判ばかりでした。

 あなたが語らなかった、そして所信表明でも触れられなかったのが戦争法の具体化です。

 いま自衛隊が派遣されている南スーダンPKO(国連平和維持活動)は、首都ジュバでの大統領派と副大統領派による大規模な戦闘の発生など情勢の悪化の中で、その性格をさらに大きく変えてきています。国連安保理は8月、「地域防護部隊」4000人の増員を決め、この部隊の権限について、事実上の先制攻撃を認めました。いよいよ日本の自衛隊が参加する条件はなくなったというべきではありませんか。

 南スーダンが“内戦状態でない”などといっているのは世界の中で安倍政権ぐらいであります。ところが政府は、南スーダンPKOへ派遣する自衛隊に、「駆け付け警護」や「宿営地共同防護」の新たな任務を加え、その任務遂行のための武器使用も認めようとしています。そんなことになれば自衛隊員が「殺し、殺される」危険が現実のものになりかねません。すでに、11月に派遣予定の、青森市に駐屯する東北方面隊傘下の第9師団第5普通科連隊では、派遣準備訓練が開始されています。家族や関係者からは「息子がいつ戦地に行くかと思うだけでも気が狂いそうになる」「人様の童(わらし)さ犠牲にする安倍首相は絶対に許せねえ」などの悲痛な声が上がっています。

 総理はこの声にどうこたえるのですか。こんな「おどろおどろしい」ことを実行しようとしているのが安倍政権ではありませんか。

 南スーダン派遣部隊への新任務の付与と武器使用の拡大は、海外での武力行使を禁じた憲法9条に明らかに違反します。

 自衛隊を南スーダンから撤退させ、非軍事の人道支援、民生支援を抜本的に強化すること、これこそ憲法9条を持つ日本が世界に誇れる国際貢献ではありませんか。答弁を求めます。

経済と暮らしこそ危機に直面――暮らしを温める経済政策こそ

 総理は、所信表明で、「世界経済はいま大きなリスクに直面しています」と述べられました。しかし総理、いま危機とリスクに直面しているのは、日本経済と国民の暮らしではありませんか。

 そのことは、政府が総額28・1兆円もの大規模な経済対策を打ち出さざるをえなかったことによっても、みずから証明しています。

 しかもその中心をしめるのは、リニア建設への公的資金投入など大型開発事業へのバラまきです。こういうやり方は、経済効果が乏しく財政を借金漬けにするとして歴史的にその失敗が証明ずみのものではありませんか。

 日本経済の実態はどうなっているか。民間消費支出が名目で0・1%低下、家計消費支出は、ほぼ1年にわたって前年比マイナスが続いています。

 日本経済新聞の日本の主要大企業へのアンケート調査によると、日本経済は「横ばい」が78・9%。その理由として「個人消費の伸び悩み」を挙げた人は実に82・8%にのぼりました。

 問題ははっきりしているのです。大企業や大資産家が利益やもうけを増やしさえすれば、いずれ国民経済に回ってくる、というアベノミクスの破たんを認め、国民の暮らしを土台から温める経済政策にチェンジすることこそ唯一最大の経済政策ではありませんか。

 日本共産党はそのために、(1)所得や資産など負担能力に応じた負担の原則に立って、大資産家や大企業にその能力に応じた負担を求める改革をすすめる、(2)あつまった税金は、大型開発へのバラまきをやめ、社会保障、若者、子育てに優先して使う、(3)人間らしく働けるルールへとチェンジする、という三つのチェンジを提案しています。

 ところが安倍政権は、見当違いの経済対策を打ち出すだけではなく、社会保障の全面的な削減に踏み出そうとしています。これは国民への負担増と生活不安、将来不安を一層募らせ、民間消費・個人消費を活性化させるという求められる経済政策とは完全に逆行する最悪の政策と言わなければなりません。

まともな給付が受けられなくなる介護保険の改悪は国家的詐欺

 なかでも介護保険の改悪は許しがたいものです。

 総理が議長を務める経済財政諮問会議は介護保険の生活援助サービスについて「軽度者に対する給付の見直しや地域支援事業への移行を含め検討をおこなう」ことを打ち出しました。すでに、要支援1、2は介護保険の対象から外されています。加えて、要介護1、2まで保険給付の対象外としたり、給付を「薄く」すれば、「要介護・要支援」と認定された人の65%がまともな給付を受けられなくなります。まさに保険あって給付なし、国家的詐欺と言われても仕方ないではありませんか。

 切り捨てようとしている生活援助サービス、掃除、洗濯、調理などは、もちろんたいせつなサービスです。あわせて、このサービスは生活援助を通じて高齢者の状態把握を行うというきわめて重要な役割も果たしているのです。生活援助と状態把握、適切な介護の提供は一体不可分のものであり、介護保険制度の枠内でのサービスであってこその生活援助であります。日本ホームヘルパー協会などが「専門性の高いサービスこそ生活の再生、状態の維持・改善、悪化の防止につながる」と指摘しているのはきわめて当然であります。生活援助サービスなどの給付外し、保険給付の切り下げは決してやるべきではないと考えますが、いかがですか。

長時間労働なくすというなら「残業代ゼロ法案」を撤回すべきだ

 総理は「働き方改革」といって、「長時間労働をなくす」「同一労働同一賃金」を実現すると言われました。

 本気でそう思われるのなら、異常な長時間労働の規制こそ急務であります。なかでも、事実上青天井になっている残業時間の上限の法的規制は待ったなしと言わなければなりません。昨年、衆院予算委員会でわが党の志位委員長が明らかにしましたが、当時、日本経団連、経済同友会の役員企業35社のうち、33社が「月45時間」の大臣告示をこえる残業協定を結んでいました。さらに28社、80%は政府が過労死ラインとしている80時間をこえる協定を、13社は驚くべきことに月100時間以上の残業協定を結んでいました。

 こうした状況を放置することは断じて許されません。「残業は月45時間、年間360時間」という大臣告示を法定化するなど、厳格な法的規制を行うべきだと考えますが、総理にその意思はありますか。

 日本経団連は、「時間でなく成果で評価する労働時間制度の導入、裁量労働制の対象拡大などを求め」ています(「2016年度事業方針」)。これは、「残業代ゼロ法案」を成立させよというものです。政府がこんな要求に応じれば、より一層の長時間労働を強いることは明らかではありませんか。総理、長時間労働をなくすというのなら、財界の理不尽な要求をはねのけ、「残業代ゼロ法案」を撤回すべきであります。

 電機産業で働く労働者らでつくる電機労働者懇談会によると、電機大企業ではこの5年間に、27万人以上の正社員、非正規社員を含めると40万人をこす大リストラが行われ、ある生産ラインでは、正社員2人を除いてすべて派遣社員に切り替えられたそうです。総理は、「非正規」という言葉をなくそうといわれました。しかし、なくすべきは言葉ではなく、現実に進む職場全体の「非正規社員化」の実態ではありませんか。それとも総理は、派遣社員が派遣元に常用雇用さえされていれば、それはすべて正社員だというのですか。それこそ、非正規で働かせる実態は放置したまま、事実を覆い隠そうということにほかならないではありませんか。

TPP――各国で反対世論、あくまで日米多国籍企業に奉仕するのか

 政府は今国会でTPP協定案と関連法案をしゃにむに押し通そうとしています。しかし、先の通常国会では両案とも成立を断念せざるを得ませんでした。なぜか。

 農林水産品の82%、聖域とした農産物重要5項目でも約3割で関税撤廃を約束しておきながら、「聖域を守る」とした国会決議は「守られた」、という政府の強弁が通用しなくなったからであります。

 政府が、TPP協定案について国会に審議を求めるのなら、交渉経過、およびその全貌を示す資料を国会に提出することが不可欠の前提であります。ところが、政府は、標題以外はすべて黒塗りという完全な隠ぺいを行い、担当大臣であった甘利氏は、睡眠障害を理由に説明責任を放棄してしまいました。

 これでは、審議の前提すら欠いていたというべきです。そのことを認めますか。

 政府は、今国会で審議したいというのなら、交渉経過を国民の前に明らかにすること、交渉担当者であった甘利氏から十分な説明がなされることが不可欠だと思いますが、そういう措置をとられますか。

 TPP協定案は、重要5項目を聖域とした国会決議に真っ向から反しています。それだけでなく、日米の多国籍企業のために、食の安全をないがしろにし、医療、雇用、保険・共済、国・自治体の調達など、あらゆる分野の「非関税障壁」を撤廃するものです。さらにISD条項によって多国籍企業が政府や自治体の施策に介入・干渉する「権利」を保障するなど、わが国の経済主権、食料主権を投げ捨てるものにほかなりません。

 だからこそ、先の参議院選挙で、TPPの影響をとりわけ強く受ける東北各県で自民党は敗北したのではありませんか。

 TPPは日本だけでなく、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど、協定を結んだ各国でも国内産業と雇用を奪うものだとして大きな反対の世論が巻き起こっています。国際的にも国内的にも大きな矛盾が広がっているなかで、なぜあなたはTPP協定の批准を急ぐのですか。食料主権と国内産業を犠牲にして、あくまでも日米の多国籍企業に奉仕する安倍政権は、それこそ亡国の政権と断ぜざるをえません。

沖縄――総理がやるべきは建設工事中止と北部訓練場の無条件返還

 総理は、参院選で一度も沖縄にはいかれませんでした。そして辺野古新基地建設をすすめる担当大臣は、沖縄県民からノーの審判を受けて落選し、「オール沖縄」の伊波洋一氏が10万票以上の大差をつけて圧勝しました。県民の意思はこの上なく明確になりました。

 それに安倍政権はどうこたえたか。参院選から一夜明けた7月11日早朝、オスプレイが離着陸する着陸帯建設を強行したのです。反対する住民を力ずくで排除する安倍政権の強権的な振る舞いは絶対に許されません。

 総理は、0・96ヘクタールのヘリパッドを既存の訓練場内に移設することで、北部訓練場、4000ヘクタールの返還が可能となるとのべましたが、これほど国民を愚弄(ぐろう)する言葉を私は知りません。

 この「0・96ヘクタール」の周辺には、六つの着陸帯に囲まれ、昼夜を分かたぬ騒音と恐怖にさらされている高江の住民が住んでいるのです。その苦しみを総理はどのように受けとめているのですか。

 米海兵隊の報告書『戦略展望2025』には、4000ヘクタールの返還区域は「使用不可能」と書かれています。もともと米軍にとっては無用の長物とでもいうべき地域だったのです。

 在日米軍のさまざまな特権を認めている日米地位協定でさえ、「必要でなくなったときは、いつでも日本国に返還しなければならない」と定めているではありませんか。

 総理がいまやるべきことは、建設工事を直ちに中止し、アメリカに対して、北部訓練場の無条件返還を求めることであります。答弁を求めます。

原発再稼働の強行は深刻な矛盾――中止させるべきだ

 安倍政権が暴走する原発再稼働の強行は、さまざまな分野で深刻な矛盾に突き当たっています。

 ひとつは、福島第1原発の状況です。

 政府は、再稼働のために福島原発事故を「終わったもの」にしようと、避難指示をあいついで解除し、賠償・支援を打ち切ろうとしています。しかし、生活圏である地域の立て直しのめども立たないまま、避難指示を解除したから戻れと言われても、住民が安心して暮らしを成り立たせることはできません。地域で生活が成り立つようになるまで、賠償の延長と必要な支援を行うべきだと思いますがいかがですか。

 福島事故は終わっていません。その原因さえいまだに究明されてはいません。政府の「中期ロードマップ」によれば、汚染源に地下水を近づけないこと、今年度中に建屋内への地下水の流入を1日当たり100立方メートル未満に抑制するというものでした。その切り札とされていたのが凍土壁でした。ところが凍土壁は凍らず、政府の検討会でも「遮水能力が高いというのはほとんど破たんしている」(橘高義典・首都大学教授)と指摘されました。総理はかつて「完全にコントロールされている」といいましたが、その言い分は完全に破たんしているではありませんか。いまこそ汚染水対策の根本的見直しが必要と考えますが、総理にその意思はありますか。

 二つには、九州電力川内原発への不安が広がっていることです。前知事は再稼働に同意しました。しかし、熊本地震が発生し、あらためて原発事故への不安と、避難計画の不備が明らかになりました。それが争点となった7月の鹿児島知事選で県民は、川内原発の一時休止を公約に掲げた三反園知事を選びました。

 三反園知事は、深刻な事故が起きた場合、現行の避難計画では住民の安全は守れないとの判断をしています。政府は住民の避難計画は地元の自治体がつくると繰り返し言ってきましたが、前知事のつくった避難計画が不十分であると現知事が判断した以上、避難計画を抜本的に見直すべきであります。

 県知事の同意もなく、避難計画も存在しない川内原発は稼働を中止させるべきではありませんか。

 三つは、高速増殖炉「もんじゅ」の破たんです。まともに運転されたことがない「もんじゅ」の廃止は当然です。同時に、核燃サイクルの中核である「もんじゅ」の破綻は、核燃サイクルと使用済み核燃料処理方針の破たんをも示すものです。である以上、六ケ所村の核燃料再処理工場もきっぱりと廃止すべきではありませんか。

 処理しようのない使用済み核燃料をこれ以上ふやしてはなりません。どの世論調査でも原発再稼働反対は5割をこえています。いまこそこの国民の声にこたえて原発ゼロを決断し、原発再稼働を中止することを強く求めるものであります。

変えるべきは憲法をないがしろにする政治の方だ

 最後に総理の憲法観をお尋ねします。

 総理は、参院選挙で憲法改定については一切語りませんでした。ところが、投票日翌日の記者会見で「いかにわが党案をベースにしながら3分の2を構築してゆくか、これがまさに政治の技術と言っていい」と述べられました。「だまし討ち」ではありませんか。「政治の技術」=すなわち手練手管で国の在り方の根本を規定した憲法を変えるつもりなのか。立憲主義・民主主義否定の最たるものといわなければなりません。

 総理はあたかも、憲法は変えるのが当然で、どこをどう変えるのかがこれからの課題だ、と言わんばかりです。しかし、9条という、世界でも最もすすんだ恒久平和の条項を持ち、30条にわたるきわめて豊かな先駆的な人権規定が盛り込まれているなど、日本国憲法は世界でも先駆的な内容を持っています。

 変えるべきは憲法ではなく、憲法をないがしろにする政治こそ変えるべきであります。「自民党改憲草案」は、9条2項を変えて国防軍の設置を明記し、海外での無条件の武力行使を可能にしようというものです。さらに憲法97条、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利」と明記した条項をまるごと削除しています。ここにこそ、基本的人権を制約しようという、自民党と総理の本音がくっきりと示されているではありませんか。これらをベースにした議論など論外といわなければなりません。

 日本共産党は、綱領で「現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的条項の完全実施をめざす」と明記しています。施行後70年余にわたって、憲法を守り、その内容を豊かに発展させてきた日本国民とともに、かけがえのない現憲法を守り抜くことを表明して、私の質問を終わります。


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