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2016年9月29日(木)

志位委員長の代表質問

衆院本会議

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 日本共産党の志位和夫委員長が28日の衆院本会議で行った代表質問は次の通りです。


風水害、熊本地震の被災者支援――「前例にとらわれない」支援を求める

写真

(写真)代表質問する志位和夫委員長=28日、衆院本会議

 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。

 この間、台風10号をはじめ風水害が相次ぎました。犠牲となった方々への哀悼とともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。農漁業への被害、大震災からの復興途上での中小企業・業者への被害が深刻であり、被害実態にふさわしい支援を求めます。32人もの命が奪われ、6人が行方不明となっています。風水害から命を守るために防災対策と避難計画の総点検が必要だと考えますがいかがですか。

 熊本地震から5カ月。住宅再建は切実な課題ですが、「一部損壊」と認定されると一切の支援策が絶たれることが大きな問題となっています。被災者生活再建支援法を改正し、「全壊」の場合の支援額を300万円から500万円に引き上げること、「半壊」「一部損壊」も支援対象にすることを強く求めます。総理は、熊本地震のさい、「前例にとらわれず、必要な支援を躊躇(ちゅうちょ)しない」と発言されました。いまこそ「前例にとらわれない」支援に踏み出すべきではありませんか。答弁を求めます。

安保法制=戦争法の発動に反対し、その廃止を求める

全面的な運用段階――すべて国民に事を隠してすすめるつもりか

 安倍政権が、昨年9月19日、安保法制=戦争法を強行してから1年。この法制は、全面的な運用段階に入ろうとしています。8月24日、稲田防衛大臣は、安保法制に基づく自衛隊の新任務の訓練に全面的に着手していくと表明しました。9月12日、総理は、自衛隊幹部を前にした訓示で「今こそ実行の時だ」と号令をかけました。

 ところが総理は、所信表明で、安保法制について一言も触れませんでした。安保法制は、総理も認めているように国民の理解を得ることなく強行可決されたものです。その運用まで国民に理解を求めることなく強行するつもりでしょうか。

 政府は、南スーダンPKO(国連平和維持活動)に派遣する自衛隊に「駆け付け警護」や「宿営地共同防護」など、安保法制に基づく新任務を付与することを想定し、訓練を開始しましたが、武器使用基準などを定めた「部隊行動基準」も、いかなる訓練を行っているかも、いっさい明らかにしていません。すべて国民に隠して事をすすめるつもりでしょうか。当然、国会に報告すべきではありませんか。答弁を求めます。

南スーダンPKO――安保法制の発動を中止し、自衛隊の撤退を求める

 南スーダンでは、7月、首都ジュバで、大統領派と副大統領派による大規模な戦闘が起こり、民間人数百人が死亡し、副大統領が国外に脱出するなど、内戦の悪化が深刻になっています。自衛隊の宿営地の隣のビルで2日間にわたって銃撃戦が起こり、宿営地内で複数の弾痕が確認されるなど、自衛隊は危険と隣り合わせで活動しています。この事態にさいして、国連安保理は、8月、4000人のPKO部隊の増派を決め、この部隊には事実上の先制攻撃の権限が与えられました。

 総理は、今年1月の私の本会議質問に対して、「南スーダンPKOの活動地域において武力紛争が発生しているとは考えておらず、派遣の前提となるPKO参加5原則は維持されている」と答弁しました。しかし、いま起こっているのは紛れもない内戦そのものではありませんか。「紛争当事者間の停戦合意」をはじめとする「PKO参加5原則」はもはや総崩れではありませんか。安保法制に基づいて自衛隊に新任務を付与し、任務遂行のための武器使用を認めるならば、南スーダンが「殺し、殺される」初めてのケースとなる深刻な危険があると考えますがいかがですか。

 南スーダンにおける安保法制の発動は中止すべきです。自衛隊を南スーダンから撤退させ、日本の貢献は、憲法9条にたった非軍事の人道支援、民生支援の抜本的強化へと転換すべきです。総理の明確な答弁を求めます。

 日本共産党は、憲法違反の安保法制=戦争法を廃止し、立憲主義を取り戻すために、他の野党、広範な市民の運動と協力し、全力をあげることを表明するものです。

暮らしを応援して、経済を良くする「三つのチェンジ」を提案する

28兆円の「経済対策」――日本経済の悪化を自ら認めるものではないか

 暮らしと経済の問題について質問します。

 総理は、所信表明で、「アベノミクス」によって「経済の好循環」が生まれていると自画自賛しました。しかし、日本経済の6割を占める個人消費は、2014年度、15年度と、戦後初めて2年連続マイナスとなりました。月ごとでみても、家計消費は、昨年9月以来、2月のうるう年効果を除けば、11カ月連続で前年比マイナスが続いています。「好循環」どころか、「アベノミクス不況」とも言うべき状況に陥っているというのが、ことの真相ではありませんか。

 安倍政権は、参院選直後に、28兆円を超える大規模な「経済対策」を打ち出しました。政権発足以来、最大規模となる「経済対策」=景気対策を打たねばならない。そのこと自体、日本経済の悪化を自ら認めるものではありませんか。

 しかも、この「経済対策」は、リニア建設への巨額の公的資金投入をはじめ、借金頼みの大型開発への「バラマキ」という、破たんが証明された対策が中心です。リニア新幹線は、それ自体が、巨額の建設費、採算見通しのなさ、環境破壊など、さまざまな問題点をもっています。だいたいこの事業は、JR東海が民間資金で行うとしていた事業であり、公的資金を投入しても工事量が増えるわけではありません。当面の「経済対策」として、いったいどのような効果が見込まれるというのですか。採算が取れなくなった場合に国民が負担を肩代わりする、国民にリスクを肩代わりさせるだけではありませんか。

「税金の集め方」――消費税頼みをやめ、「負担能力に応じて」の原則で税制改革を

 大企業がもうければ、いずれは国民の暮らしに回ってくるという「アベノミクス」の破たんは今や明瞭です。日本共産党は、国民の暮らしを応援して、経済を良くする、次の「三つのチェンジ」を提案するものです。

 第一は、「税金の集め方のチェンジ」です。消費税頼みの財源論が行き詰まっていることは、8%への増税が家計消費と日本経済への甚大な打撃となり、2度にわたって10%への増税を延期せざるを得なくなっていることからも明らかです。10%への増税は中止し、消費税に頼らない財源論へのチェンジが必要です。

 株取引にかかる税金が軽いため、所得1億円を超える富裕層ほど所得税の負担率が軽くなるという逆転現象が生まれています。研究開発減税などもっぱら大企業が使う優遇税制のため、法人税の実際の負担率は、中小企業の20%程度に対して、大企業は12%になるという逆転現象が生まれています。総理、これは誰がどう考えても不公平ではありませんか。この不公平をただし、「税金は負担能力に応じて」の原則に立った税制改革で、暮らしを支える財源を賄うべきだと考えますがいかがですか。

「税金の使い方」――大切な税金は、社会保障、若者、子育てに優先して使う

 第二は、「税金の使い方のチェンジ」です。国民からお預かりした大切な税金は、まず、社会保障、若者、子育てに優先して使う。これが日本共産党の提案です。

 社会保障をめぐって、医療、介護、生活保護などの大改悪案が、政府の審議会で出され、来年度の予算案や法案で具体化されようとしていることは、きわめて重大です。介護保険では、「要支援1、2」と認定された人の保険給付はずしに続いて、「要介護1、2」と認定された人のデイサービス、ホームヘルパー、介護ベッド・車いすなどの福祉用具貸与などの保険給付はずしが具体化されようとしています。全額自己負担となれば負担は10倍です。日本ホームヘルパー協会は、この動きに反対して次のようにのべています。

 「初期段階における、専門性の高い生活援助サービスの提供こそが、利用者の気力のおとろえの回復や交流不足を補い、生活の再生、状態の維持・改善、悪化の防止に繋(つな)がり、わずかな支援で、高齢者が自分らしく暮らす期間を長くすることができる助けになっていることを、介護の実践を通して確信しております。また、それは、将来の介護給付費削減につながると認識しております」

 総理、日々、介護の最前線で頑張っておられる専門家のこの声をどう受け止めますか。「要支援1、2」と「要介護1、2」をあわせれば、「要支援」「要介護」と認定された人全体の65%を超えます。高い保険料を徴収しながら、65%以上の人から保険給付を取り上げるというのは「国家的詐欺」というほかないではありませんか。

 社会保障の拡充は、何よりも憲法25条の要請です。社会保障の切り捨て計画を中止し、社会保障拡充路線に転換することを、強く求めるものです。

 総理は、所信表明で、「給付型の奨学金の実現」をはかるとのべましたが、どのような規模の制度にするかが問題です。日本共産党は、月額3万円の給付奨学金を70万人の学生に支給する制度を創設し、規模を拡大していくことを提案しています。制度をスタートさせるうえで必要最小限の提案だと考えますがいかがですか。

 総理は、所信表明で、「保育の受け皿整備を加速する」とのべましたが、規制緩和による「詰め込み」でなく、保護者が安心して預けられる保育が必要です。日本共産党は30万人分の認可保育所の緊急整備の提案をしています。野党共同で保育士の給与を月額5万円引き上げる法案を提出しています。「未来への投資」という総理の言葉が真実なら、これらの提案は、あまりに当然のものではありませんか。答弁を求めます。

「働き方」――労働者の命、健康、権利を守る本物の改革を

 第三は、「働き方のチェンジ」です。総理は、所信表明で、「働き方改革」を行うとして、「長時間労働の慣行を断ち切る」とのべました。本気でこれに取り組むというならば、二つのことをやるべきです。

 一つは、残業時間の上限を法律で規制する労働基準法改正です。「残業は月45時間、年間360時間以内」という大臣告示を法定化することを強く求めます。いま一つは、「サービス残業」=ただ働きを根絶するために、違法なただ働きが発覚したら残業代を2倍にして払わせる罰則を科すということです。ここに踏み込む意思がありますか。

 同時に、長時間労働をなくすというなら「残業代ゼロ法案」を撤回すべきです。この法案は、成果で賃金を払うことと一体に、労働時間規制をなくし、残業代支払い義務をなくしてしまおうというものです。そんな制度が導入されれば、とめどもない長時間労働が強制され、「過労死」をひどくすることは明らかではありませんか。この悪法はきっぱり撤回することを強く求めるものです。

 総理は、所信表明で、「『非正規』という言葉を一掃する」とのべました。しかし、一掃すべきは「言葉」ではなく「使い捨て」という働かせ方ではありませんか。改悪につぐ改悪を積み重ねてきた労働者派遣法を抜本改正し、非正規から正社員への流れをつくる雇用のルールの強化をはかるべきではありませんか。

 日本共産党は、財界のもうけのために働くものを犠牲にするニセ「改革」でなく、労働者の命、健康、権利を守る本物の改革を強く求めるものです。

TPP協定の批准に断固反対する――輸入米の価格偽装は重大

 安倍政権は、この臨時国会で、TPP協定(環太平洋連携協定)の批准を強行しようとしています。

 多国籍企業がグローバルにもうけるために、各国の国内産業・雇用・国民生活を犠牲にするTPPの矛盾は、他のTPP参加国の国内でも広がっています。

 アメリカでは、大統領候補がそろって現行のTPP協定案反対を公約にしています。参加国のGDP(国内総生産)の6割を占めるアメリカが承認しない限り、現行TPP協定は発効しません。総理は、協定発効へのどういう見通しをもっているのですか。当選を果たした大統領が、公約をたがえるとでも考えているのですか。

 TPPにかかわって、この間、新たな大問題が発覚しました。輸入米の価格=SBS価格が偽装されていたという問題です。政府はこれまで「輸入米の国内販売価格は国産米と同水準だから、TPPでコメは影響を受けない」と説明してきました。ところが、その輸入米の価格が偽装され、政府の公表より「60キロで最大3600円」も安く販売されていたという事実が明らかになったのです。TPPによる影響の「政府試算」の前提が崩れたのです。さらに農水省は、2年も前にこの価格偽装の情報を得ていたことを認めています。だとすれば、政府は真相を隠し、国民を欺いてきたことになるではありませんか。真相の徹底究明と、誤った前提に基づく「政府試算」の撤回を求めます。

 先の参議院選挙では、TPPが争点となった東北で、自民党は6県中5県で野党統一候補に敗北しました。総理は、この民意をどう受け止めていますか。日本共産党は、日本の食料と農業、食の安全、経済主権を、多国籍企業に売り渡すTPP協定の批准に断固反対してたたかいぬく決意を表明するものです。

沖縄への常軌を逸した強権――日本の地方自治、民主主義の根本が問われている

 安倍政権の沖縄に対する強権的なふるまいは、常軌を逸したものです。

 安倍政権は参院選直後、人口140人の東村高江地区に、全国から500人もの機動隊を動員して、反対する住民を力ずくで排除し、米軍オスプレイ着陸帯建設を強行しました。警察が生活道路を封鎖する、自衛隊ヘリが空から重機を運び込む、防衛局が無断で国有林を大量伐採する――どれも違法行為そのものではありませんか。

 辺野古の米軍新基地建設をめぐっても、安倍政権は、総務省の国地方係争処理委員会が、国と県との「真摯(しんし)な話し合い」を求めたにもかかわらず、話し合いによる解決を放棄し、県を一方的に提訴するという暴挙に打って出ました。これは国と自治体が対等・協力の関係であることを定めた地方自治法を根底から蹂躙(じゅうりん)する態度ではありませんか。

 参議院選挙では、辺野古新基地建設反対の「オール沖縄」の伊波洋一候補が、自民現職閣僚を10万票を超える大差で破って勝利し、沖縄選出の衆参6人の国会議員の全員が「オール沖縄」の議員となり、自民党議員はゼロとなりました。総理、選挙で、このうえなく明瞭な民意が示されているにもかかわらず、それを一顧だにしない態度が、民主主義の国で許されると考えているのですか。

 問われているのは日本の地方自治、民主主義の根本です。しかと答弁願いたい。

北朝鮮の核・ミサイル開発、「核兵器のない世界」について

 北朝鮮の核実験は、弾道ミサイル発射とともに、世界の平和と安定にとっての重大な脅威であり、国連安保理決議違反の暴挙であって、わが党は厳しく糾弾するものです。北朝鮮の核・ミサイル開発に国際社会がどう対応すべきか。二つの点が大切だと考えます。

 第一は、軍事対軍事の危険な悪循環でなく、対話による解決に徹することです。3月の国連安保理決議では、制裁措置の強化とともに、6カ国協議の再開を強く呼びかけました。核・ミサイル開発を放棄させるために、北朝鮮を6カ国協議という対話のテーブルにつかせる、そのために中国を含む国際社会が一致して制裁の厳格な実施、強化をはかることなど、政治的・外交的努力を抜本的に強めることが重要であります。

 第二は、より根本的には、国際社会が本気になって「核兵器のない世界」への具体的行動に取り組むことが重要となっています。すなわち、核兵器禁止条約の国際交渉開始という方向に進むことが、北朝鮮の核開発の口実を失わせ、核開発放棄を迫るうえで、急務となっています。国際社会が「われわれはもう核を捨てる。だからあなたも捨てなさい」と迫ることが、北朝鮮に対して、最も強い立場に立つことになるのではないでしょうか。

 いま「核兵器のない世界」の扉を開く画期的な動きが起こっています。8月、国連の核軍縮作業部会が、核兵器禁止条約の締結交渉を来年中に開始することを、国連総会に勧告する報告書を採択したのです。来年中の交渉開始を支持しているのは、国連加盟193カ国の過半数となる106カ国にのぼります。しかし、日本政府は、作業部会での採決で棄権しました。唯一の戦争被爆国の政府の対応としては、あまりに情けないものではありませんか。こうした態度を抜本的に見直すことを強く求めるものです。

憲法問題――立憲主義否定の「自民党改憲案」を「ベース」にした議論など論外

 最後に憲法改定問題について質問します。総理は、参院選投票日の翌日の会見で、「いかにわが党の案をベースにしながら3分の2を構築していくか。これがまさに政治の技術」と公言しました。

 しかし、「自民党改憲案」は、憲法9条2項を削除し、「国防軍」の保持を書き込み、海外での無制限の武力行使を可能にするとともに、「公益及び公の秩序」の名で基本的人権の大幅な制約を可能にするなど、憲法によって権力を制限するという立憲主義を根底から否定し、憲法を憲法でなくしてしまう恐るべき内容が満載されています。この案を「ベース」に憲法審査会で議論するというのが自民党の方針ですか。わが党は、憲法改定の発議をする憲法審査会を動かすことにはもともと反対ですが、「自民党改憲案」を「ベース」にした議論など、いよいよもって論外といわねばなりません。

 日本共産党は、「現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざす」という明確な対案を掲げ、それを綱領で明記しています。いま変えるべきは憲法でなく、憲法をないがしろにした自民党政治であることを訴え、代表質問を終わります。


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