2016年9月28日(水)
きょうの潮流
「今の自民党は戦前の大政翼賛会的になっている」。かつて自民党の中枢にいた山崎拓さんは、日弁連の戦後70年記念シンポジウムでそう直言していました▼党内には活発な議論がなく、政府案を唯々諾々と是認していると。テレビの番組では戦争法案について党内から異論が出ないことに「一種の全体主義的な体制になっている」とまで。同じような懸念は自民党の長老や保守の人たちからも聞こえてきます▼前の自民党にはまずいとなったら退くだけの「のりしろ」というか「ゆとり」というか、政策に幅があった―。長く自民政治と対決してきた日本共産党の不破哲三さんも昨年の記者クラブの講演で語っています。“今の自民党はすっかり変わった。モノカラ―(単色)の政党といってよい”▼政治的には対極の立場に身を置いてきた2人が同様の印象をもつ安倍自民党。それを象徴するような光景が国会にひろがりました▼首相の所信表明演説の途中でした。自衛隊などに「今この場所から心からの敬意を表そう」と呼びかけると、自民党議員がほぼ総立ちで拍手。議長から注意され、あの維新の会からも「異常で異様な光景だ」との声が上がりました▼言論の府を多数で圧する示威行為。共産党の志位委員長も「23年間国会にいるが、こんな光景は初めて。国会の上に自衛隊を置く。首相の号令で全員起立。これは危うい」と。多くが抱いた不快さ。それは70年余を過ぎて政治の場によみがえった歴史の亡霊を見た気持ちの悪さでしょう。